「まぁ、我々に話が回ってくるのは理解できるけれどね。」
友雅は扇を手で弄びながらつまらなそうに誰に言うでもなくつぶやいた。
「確かに元八葉の我々ならばとお考えになるのはわかりますが、私は武官ではありませんのでどこまでお役に立てるか…。」
友雅の言葉を引き受けてうつむいたのは鷹通だ。
そしてそんな鷹通の言葉を聞いて永泉が更に暗く沈みこんだ表情でうつむいた。
「鷹通殿は明晰な頭脳をお持ちではありませんか。お役に立てるかどうかわからないのはわたくしの方です…。」
「お前は霊力の高い僧侶であろう。問題ない。」
永泉の隣に座る泰明が放った一言に永泉はあたふたと慌ててそわそわと体を動かし、何か言おうとして口を閉ざすと小さくため息をついて落ち着いた。
「まあ、帝がやれってんならしかたねーんじゃねーの。天真も詩紋もいねーのはちょっとさみしいけどな。あ、あとあかねな。」
一人、濡れ縁に座って足をぶらつかせているイノリがつまらなそうにそう言うと、部屋の一番奥に座していた頼久が深いため息をついた。
「それについては…。」
初めてこの場の主である頼久が口を開いたので一同の視線が頼久に集中した。
この場、つまり土御門邸の武士溜まりに一同は集合していた。
何故かといえばそれは帝からある指令が下されたからだ。
誰に下されたのかと言えば鷹通の言った元八葉の面々に、だった。
内容が内容なだけにこのメンバーが招集され、目的地へ派遣されることになったので、さっそくまずは一同集まって打ち合わせをという流れになった。
大勢が集まって話ができる場所であかねに気遣いをさせない場所と考えた時にこの武士溜まりでの会議が決定した。
泰明の屋敷は安倍晴明に迷惑がかかりそうだというので却下、イノリの家にはこの人数は手狭なので却下、寺に集まるのもどうだろうということで永泉のもとも却下された。
友雅や鷹通の屋敷に集合という手もあったのだが、たまたま頼久が仕事に追われていたこともあって武士溜まりでの会議がこうして実現したのだった。
「それについてって、あかね、どうかしたのかよ、頼久。」
「どうかしたというか……。」
言いづらそうに頼久が言葉を濁しているとそこへとたとたと騒がしい足音が聞こえてきた。
武士のものとは明らかに違う軽やかな足音にこの場にいる全員がその足音の主を脳裏に描いた。
そしてこの場の全員が描いたその足音の主は誰もが予期した通り元気よく姿を現した。
「あ、もうみんなそろってたんですね!お久しぶりです!」
なんだか懐かしいような気がする水干姿で現れたあかねはすっかり長く伸びた髪を頼久と同じように一本に結い上げていた。
その様子の物珍しさに一瞬目を見開いた頼久以外の八葉一同は、みんなそのまま何も言えずに凍りついた。
水干姿。
それはつまり、あかねが外出を考えているということだ。
そして今は帝の命で遠出の計画を立てている真っ最中。
ということはだ、あかねもみんなと一緒に行くつもり、ということになる。
全員がそう思い至って一斉に深いため息をついた。
「神子殿…。」
最初に疲れたような声を出したのは頼久だった。
実は今回の帝からの命はそれぞれのもとに直接使者がやってきて伝えていった。
だから、八葉だけで集まって話し合い、計画を立てて実行すればあかねには何も知らせずに全てを終えることができると誰もが思っていた。
そう、あかねのもとに使者がつかわされなければそれで済むはずだった。
ところが、使者はあかねのもとにもやってきた。
もちろんあかねにも八葉に同行してほしいなどという話を持ってきたわけではない。
夫である頼久を少し長く拘束することになって申し訳ないという帝の文を届けに来たのだ。
おかげであかねは元八葉の面々がこれから何をしようとしているのかを知ってしまった。
知ってしまったとなるとそこからあかねの行動は誰にでも予想できる。
当然、仲間達が仕事をしに遠出をするというのだから自分も同行すると言い出した。
夫である頼久が誰もが想像するであろう時間の倍の時間をかけて屋敷にとどまるように説得したけれど、あかねは決して首を縦には振らなかった。
仲間達だけを危険な目にあわせて自分だけ安全な場所で待っているなんていうことができる女性ではないと頼久も良く知っているだけに、結局のところ折れたのは頼久だった。
ただし、頼久も完全にあきらめたわけではない。
頼久にとって最後の砦がこの場だった。
ここには女性の扱いに長けている友雅に弁舌ではなかなかの鷹通、理詰めでの説得なら泰明とあかねを説得できそうな人物がそろっている。
頼久はそんな仲間達へと視線を送った。
「我らが神子殿は今日もご機嫌麗しいようだね。」
何気ない話しかけ方はさすがは女性の扱いに長けている友雅だ。
あかねは頼久の隣にちょこんと座りながら「はい」と元気よく答えた。
「で、そのいでたちはどうしたものかな?結い上げている髪は愛らしくていいけれど、珍しいね。いでたち全体も、これは珍しいというより懐かしいと言った方がいいかな。」
「どうしたって、もちろんみんなと一緒にお仕事に行くので動きやすいかっこうにしただけですよ?」
どうしてそんなことを聞かれるのかとばかりにあかねが答えれば、友雅はその艶やかな顔に苦笑を浮かべた。
「主上が神子殿も派遣するとおっしゃったという話は聞いていないんだがね。」
「もちろんそんなこと命令されたりしてません。でも、みんなが危ないところに行くのに私だけお屋敷でのんびりなんてしてられません。」
さもありなんと友雅も思った。
何しろこの異界から降ってきた神聖なる神子は京の危機に際して自らの身を敵前にさらけ出し、正面から戦って勝利を得たような人物なのだ。
しかも清らかなるその心根はどんな身分のどんな人間にも平等に向けられる。
今回は派遣されるのが自分の仲間達ということもあって、あかねの性格を考えれば黙って引き下がるはずもないということは友雅にも予想できた。
「まあ、神子殿はそう考えるだろうねぇ。」
さてこれはどうやって説得したものかと友雅が考え始めるのと同時に、相棒の鷹通が眼鏡の位置を直しながら口を開いた。
「神子殿のお気持ちはよくわかりますが、龍神の神子として怨霊を封印していた頃とはもう立場も違いますし、今回は屋敷にて我々の帰りをお待ち頂いた方が良いと思います。」
「立場は…確かに変わりましたけど…。」
そう、あかねは既に龍神の神子ではなくなっている。
その上、頼久の、つまりは次期源武士団棟梁の妻という立場でもあった。
龍神の神子という立場が公には伏せられていた頃とは違って、頼久の妻というれっきとした立場が今のあかねにはあるのだ。
それを持ち出しての鷹通の説得に友雅は小さくうなずいた。
さすがは鷹通と友雅が内心で相棒の手柄を称賛してる間にあかねは一度考え込み、それからすっと鷹通を正面から見つめた。
「妻だからこそやっぱり旦那様にはついていきたいって思います。」
「ひょっとして神子殿の世界では夫婦が離れていることは少ないのかな?」
「そうですね。単身赴任とかは普通にありましたけど、でも、やっぱり一緒にいる方がいいっていう考え方ですね。」
友雅に指摘されて少し考えてからあかねははっきりと答えた。
それは元の世界の共通の考え方ではなかったかもしれないけれど、あかねの中ではそれが理想だと思っていた考え方ではある。
真剣な眼差しで語るあかねに友雅はなるほどとばかりにうなずき、鷹通は苦笑した。
「神子殿の世界ではそうだったかもしれませんが、こちらではやはり妻は自らの屋敷にて夫を待つものです。しかも頼久は武士。その仕事といえば危険が伴うものばかりです。妻が同行するというのはいかがなものかと思います。」
はっきりとした鷹通の断言に、それでもあかねはひるまなかった。
「鷹通さんの言ってることもわかるんです。でも、私はみんなと一緒に怨霊と戦ってきました。たくさん助けてもらってみんなでやっと勝つことができたって思ってます。だから、今度だって、なるべくみんなでいた方がいいと思うんです。私に何ができるかなんてわかりませんけど、でも一緒にいれば何かができるはずです。離れていたら間違いなく何もできません。」
「頼久を安心させることはできると思うけれどね。」
「それは…。」
友雅の放った一言は誰の耳にもとどめに聞こえた。
さすがのあかねもこれには言葉に詰まってしまって、しっかりしていたその視線もだんだんとうつむいた。
一同の間に気まずい沈黙が満たされる。
なんとも居心地の悪い時間はその場にいる全員に嫌な汗をかかせた。
これであかねが安全な京の屋敷にとどまってくれるのならと成り行きを見守っていた頼久だったが、さすがにあかねがうつむいてしまったので慌てた。
あかねはいつもならこんな時、友雅相手に激しく食ってかかったりするのだが…
頼久がそっと隣のあかねの様子をうかがうと、膝の上に置かれた小さな手が白くなるほど力をこめて握り締められているのが見えた。
うつむいているから表情はわからないが、きっと涙を浮かべているだろうと頼久は想像した。
そうなると、今度は頼久の方が揺らいだ。
こんなことであかねを泣かせてしまうのなら、いっそのこと連れて行って自分が守り通せばいいのではないかとさえ思ってしまうのが頼久だ。
あかねの笑顔のためならどんなことでも厭わない。
そう頼久が心の中で思い始めたその時、あかねの視線がゆっくりと頼久の方へ向けられた。
頼久が予想したとおり、うっすらと涙をためている大きな目が頼久をとらえていた。
「私が一緒だと頼久さん、安心してお仕事できませんか?」
「そ、それは……。」
「一緒に行っても私、邪魔にしかなりませんか?」
「……。」
震えそうなか細い声で尋ねられて頼久は言葉に詰まった。
ここでその通りだといえばあかねはあきらめて屋敷に残るはずだ。
それはわかっている。
わかっているけれど、頼久はここでうなずくことができなかった。
「そう、ですよね…私なんかが行っても邪魔にしかなりませんよね…。」
「そんなことはありません!」
今にも泣き出しそうなあかねを前に頼久は思わず叫んでいた。
あかねが邪魔にしかならないなどということはありえない。
彼女はどんな苦境にあっても自分達を励まし、導き、必ず良い未来へと連れて行ってくれる女神なのだ。
少なくとも頼久にとってはそうだ。
「神子殿は側にいてくださるだけでどれだけ私の励みになることか知れません。」
「側にいるだけで?」
「はい!」
このやり取りであかねはぱっとその顔に華やかな笑みを灯し、友雅は苦笑し、鷹通は溜め息をつき、永泉はわたわたと慌て、イノリがつまらなそうに天を仰いだ。
「じゃあ、一緒に行ってもいいですか?」
改めて笑顔でそう尋ねられて頼久は我に返った。
そう、今はあかねの同道を断るために友雅と鷹通が頑張ってくれていたのだ。
それなのに自分は…
と頼久が後悔した時にはもう遅く、満面の笑顔をもう一度曇らせることなど頼久にできるはずもなく…
「…はい…。」
頼久にはそう答えるのが精一杯だった。
「有り難うございます。頑張りますね!」
嬉しそうなあかねの顔を見てしまえば、自分の答えが間違っていたとわかっていても心安らいでしまう自分に頼久は小さく溜め息をつくしかなかった。
「で、ですが…危険なのでは……。」
ここで意外な人物が声を発した。
いつも控えめ、なかなか自分の意見を言わない永泉だった。
永泉にしてみればあかねの安全を思えばこそ、思い切っての発言だっただろう。
これは珍しいとばかりに友雅と鷹通の二人も目を丸くして永泉を見つめた。
「問題ない。」
相棒の言葉に端的に反応したのは泰明だった。
予想だにしない相棒の裏切りに、永泉が顔色を青くして慌てる。
「も、問題ない、でしょうか?」
「神子は神子だ。我らに力を与える。危険だというのなら我々が守ればよい。頼久もいる。問題ない。」
いつもと変わらない静かなその口調は本当に問題がないと一同を納得させる説得力があった。
それでもなんとかあかねを思いとどまらせなければと鷹通が口を開こうとした刹那、今度はイノリが足音高らかに濡れ縁から一同の方へと歩いてきてどかっと座ると、腕を組んで口を開いた。
以前はまだまだ幼さを残していたイノリも今ではすっかり背も伸びて、頼りがいのある青年だ。
一同の視線はその立派な若者に成長しつつあるイノリへと集中した。
「つまりさ、オレ達が守ればいいってことだろ。いいじゃん、頼久がいいって言ってんだし、オレだってあかねと一緒の方がいいし。みんなだってそうだろ?」
「それは…。」
鷹通が言葉を飲み込んだ。
イノリの言ったことは真実だ。
この場にいる誰もがあかねと一緒ならと思っている。
そしてまだやんちゃさの残るイノリの言葉は一同の胸に直球で届いた。
「鷹通の負け、だな。」
「友雅殿…。」
「泰明殿も問題ないとおっしゃっているし、ここは我々が元八葉として神子殿を何からもお守りするしかあるまい。」
「友雅さん…有り難うございます。」
友雅の断言、そしてあかねの嬉しそうな笑顔。
これで全ては決した。
そうと決まってしまえば、一同の顔には笑みが浮かんだ。
元龍神の神子と元八葉、全員ではないが、この京にいる者は全てそろっての出陣だ。
それは元八葉の仲間達にとってもあかねにとっても誰かがかけた出陣よりよほど心強いものだった。
「じゃあ、さっそく、鬼退治の打ち合わせをしましょう!」
腕まくりをせんばかりの勢いであかねがそう言うと、一同は同じ顔で苦笑した。
鬼退治といわれてしまうと少々違和感があったからだ。
実際、帝からの指令とは一言で言えば鬼退治ということになるのだが…
「神子殿は帝からの御依頼はどの辺までご存知なのですか?」
鷹通が尋ねると、あかねはにっこり微笑んで語りだした。
「頼久さんから聞いたのでだいたいはわかってると思いますよ。熊野の方で鬼の目撃情報がいっぱいあって、犠牲者も出てるから調べて鬼を退治してきてほしいってことですよね?」
「まあ、簡単に言えばそうなりますね。」
あかねが言うと本当にぽんと鬼退治をして帰ってくればいいように聞こえて、鷹通は苦笑した。
「あ、でも、私、熊野ってどの辺にあるかわからないんですけど……頼久さんの故郷より遠いですか?」
「はい、摂津よりはかなり南方にあるかと…。」
「そうなんだ、じゃあ、馬で行くのがいいですね。」
行く気満々のあかねは頼久の答えに素早く馬という移動手段をはじき出して微笑んでいる。
頼久はというと困ったような嬉しいような微妙な表情であかねにうなずいていた。
馬で行くとなるとあかねも馬に乗るということになる。
なにしろあかねは牛車が嫌いだし、牛車だとより時間がかかることになるから絶対に使うとは言わないからだ。
そうなると一人で馬に乗れないあかねは当然のことながら頼久と同乗することになり、同乗となれば頼久は愛しい妻をかき抱いて移動することができるわけで、まんざらでもない。
それが頼久の複雑な表情の理由だった。
「神子殿は簡単に鬼退治と言ってくれるけれどね、そう簡単な話ではないかもしれないよ。」
「そう、なんですか?」
苦笑する友雅にあかねが小首を傾げる。
最近はずいぶん大人びたあかねだけれど、そういう仕草はまだまだ愛らしくて友雅の苦笑があっという間に微笑に変わった。
「鬼の正体が知れないからねぇ。鬼ということで我々が派遣されるのはまあわからないでもないけどね。実際のところ、アクラムやその手下がということは考えにくいし、そうなれば何を指して鬼と言っているのかがわからないからねぇ。」
「あ、そうか。ものすごーーく強い怨霊だったりとかするかもしれませんしね。」
「まあ、その可能性もないとは言わないねぇ。」
「一応、出発までに私が集められるだけの情報を集め、過去の記録なども調べて予想はしてみますが…。」
「いくら鷹通が優秀でも、あくまで予想だ。予想は予想に過ぎないからね。用心してかかるに越したことはないさ。」
「はい。」
友雅と鷹通がうなずき合うのを見て、あかねもうんうんとうなずいた。
「私はできる限りの備えをしてかかる。イノリは頼久に刀でも見繕って来るがいい。友雅は武官だ。鍛錬を続けていれば問題ない。鷹通も短刀は忘れるな。頼久には言うまでもあるまい。」
淡々と指示を出す泰明に一同がうなずく中、あかねと永泉の視線が泰明に集中した。
「あの……泰明殿、わたくしは何を…。」
「お前は笛を携えていればそれでよい。」
「ふ、笛…。」
「お前の笛の音には力があると言っている。」
「あ、そ、そうでした…。」
自分は戦力として認められていないのかと慌てた永泉が胸をなでおろしていると、今度はあかねが泰明の方へにじり寄った。
「泰明さん!私は?」
「神子は……美しい衣を二つ三つ持てばよい。」
「はい?なんで衣なんですか?」
「神子が着飾って座っていれば頼久のやる気が増すだろう。」
「……。」
一瞬きょとんとしたのはあかねだけではない。
その場の誰もがそれが泰明の口から出た言葉かと己の耳を疑い、そして一番早く我に返ったあかねが顔を真っ赤にして口を開いた。
「わ、私の役目ってそれだけですか!」
「とりあえずは。重要な役目だと思うが。」
「そ、それは…。」
妻という立場がある以上、確かに重要な役目かもしれないと考えてしまって、あかねは頼久へ視線を移した。
本当にそんなことでやる気が増すならおしゃれくらいいくらでもする。
あかねはそう決意して今度は頼久へとにじり寄った。
「私が綺麗な衣を着たら頼久さんのやる気って増すんですか?」
「は………………はい…。」
問われて深呼吸をたっぷり3回はできるほどの間考えて、頼久は結局それしか答えられなかった。
ニッコリ微笑むあかねを見れば答えが間違っていなかったことはわかるが、それでも他に言いようがなかったものかと自分の口下手を呪いたくなる。
そしてはっと周囲の視線に気付いて辺りを見回せば、泰明以外の一同は勘弁してくれといわんばかりの顔をしていた。
「では、私は支度にかかる。」
「私も調べ物を開始します。」
泰明と鷹通が席を立ったのを合図に、我も我もと元八葉の面々は頼久とあかねの前から姿を消した。
最後にイノリが去ってしまうと、急に二人きりになったことが恥ずかしくてあかねは顔を赤らめて視線を落とした。
ところが、あかねの耳に届いた声は決して甘いものではなくて、どこか凛とした武士の声だった。
「神子殿。」
「はい?」
「友雅殿のおっしゃったように今回の敵は正体が確かではありません。危険が伴うことは間違いありませんので、どうか私の側を離れませんよう、お願い致します。」
「あ、はい。気をつけますね。でも私、全然恐いとは思ってないですから。みんなが一緒だし、それに、頼久さんは絶対守ってくれるって信じてますから。」
目の前で微笑むあかねをじっと見つめて、頼久はこの方を絶対に、何に代えても守り抜くのだと誓いを新たにした。
時節は初夏、旅をするにはもってこいの季節だ。
やがて来る厳しい暑さの前の爽やかな風の中、一同が旅立ったのは5日後のことだった。
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