
一人で部屋にいるとどうしてもあなたのことを想ってしまう。
そういう部分で、私はおそらく京にいた頃と何も変わっていない。
あの頃も今も、こうして私はいつもあなたを想っている。
ただあの頃と違うのは、あなたの声を聞こうと思えばいつでも簡単に聞けるということ。
あなたに会いたいと思えば、身分など気にせずいつでも会いに行けるということ。
気付けば私はいつも携帯を見つめてしまっている。
この小さな機械を使えばあなたの声を聞くことは造作もなくて。
あなたはききっとあの朗らかな声を聞かせてくださるのでしょう。
そうとわかっていても、私は携帯を手にはしない。
あなたの声を聞きたいとは思う、だが、あなたの顔を拝見したいという想いはもっと強い。
携帯で話をしてしまえば、あなたはもう満足して今日は会いに来ては下さらないかもしれない。
そう思うと携帯へ手を伸ばす気にはなれなくて。
会いたいと思うのなら自分から会いに行けばよい。
この世では身分というものは存在しないのだから。
私があなたに会いに行くことはたやすいことで。
それでも私はあなたに会いに行くための一歩を踏み出せない。
会いに行き始めれば毎日行かずにはいられなくなることがわかっているのだ。
私のような者が毎日会いに行けばあなたに愛想をつかされそうな、そんな気がして。
私はやはり会いに行くのも躊躇ってしまう。
そうして携帯を見つめながら夕刻を迎えると、あなたはいつも私の不安を吹き飛ばすように訪ねてきてくださるのだ。
玄関の向こうにあなたの気配を感じてあなたがドアに手をかける前に私が扉を開けてしまうのは、私があなたを待ち焦がれているから。
ドアを開けた瞬間に目に入るあなたの笑顔は、一日の私のもどかしい思いを全て吹き飛ばしてくださる。
「こんにちわ、頼久さん。」
私は笑顔であなたを迎え入れて、そしてあなたの話に静かに耳を傾ける。
それだけのことで私がどれだけ幸福か、あなたは知っているでしょうか。
あなたの笑顔を見ているだけで私は満たされて、
そしてあなたがこの家を去った後、私はまた携帯を見つめ続けるのです。
それでも私は、あなたを想うだけで幸福です。
ただ一人の私の神子殿へ、この想いの欠片でも届かんことを。
管理人のひとりごと
記念すべき拍手御礼SS第一作です。
いつも無口な頼久さんは心の中で何を思っているのでしょう?
と、考えてみました。
結局、あかねちゃんのことしか考えてない、が結論(笑)
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