嫉視
 朝起きて頼久を見送ってから、あかねは腕まくりをして厨に立った。

 どうしてもと女房達に頼み込んで入れてもらったのだ。

 で、何をしたかったのかというと、頼久の昼食用のお弁当を作る。

 これが本日のあかねの最大の目的だった。

 あかねはこの京を救った尊き神子であるだけでなく、左大臣家の養女であり、あの藤姫が姉とも慕っている人物で、この屋敷の女主人、すなわち源の若棟梁頼久の正妻である。

 これだけの肩書きがついている、女房達にしてみればそれこそ深窓の令嬢どころの騒ぎではないやんごとなき姫君が厨に立つなどとんでもないことだ。

 だからいくらあかねの頼みであっても普通ならあかねが厨で料理をすることなど不可能なのだが、頼久があかねがどうしてもという時は自由にさせていいと許しを出しておいてくれたのであかねはやっと料理をすることができた。

 腕をまくってイノリが贈ってくれた包丁を手に気合を入れるあかね。

 何がどうなるのかと女房達は遠巻きにあかねの作業を見守った。

 もし神子様が怪我でもなさったら…

 そう考えるだけで女房達の顔色は青白い。

 そんな視線が見守る中、あかねはせっせと料理を始めた。

 元の世界にいた頃から料理は得意とは言わないが別に苦手でもなかった。

 京にきてからは詩紋にも色々習ったし、食材にもだいぶ慣れてきた。

 だからあかねの手際は女房達が思っているよりずっと確かだ。

 あかねは女房達の見守る中、多少もたつきはしたもののそれでも手際よく料理を作り上げると、女房達に入れ物を用意してもらってそれに詰め込んだ。

 そして…

「じゃ、いってきま〜す。」

 女房達が止める間もなく、あかねは水干姿で弁当を手に屋敷を飛び出してしまった。

 今日は一日、頼久は武士団で後輩達の面倒を見たり、部下が担当している仕事の進行状況を聞いたりしているはずだった。

 武士団の面倒を見ているということは当然、土御門邸の武士溜まりにいるに決まっているのであかねにしてみればちょっと走っていけばすぐそこのご近所さんなのだ。

 だが、女房達にとっては大事な女主人だ。

 護衛をつけずに外出、しかも徒歩でなどもってのほかだ。

 普段はたいてい武士団の警護の者か夫の頼久が護衛につくのだが、さすがに歩いて5分の土御門邸という気安さであかねは飛び出してしまったのだ。

 門を警護していた武士団の者が慌ててあかねの後を追うのを見て女房達はやっと安堵の溜め息をつき、あかねはそんなことなどおかまいなしで楽しそうに駆けていく。

 後ろを追ってくる警護の武士にさえ気付かずに、あかねは満面の笑みを浮かべて土御門邸へ駆け込むと、そのまま武士溜まりへと向かった。

 時刻はまだ昼には早いくらいだ。

 京では食事は朝と晩の2回というのが常識らしいが、あかねの常識では食事は日に3回なので、あかねの屋敷では昼も軽く食事をとる。

 今ではすっかり頼久もその生活に慣れてしまったので、こうしてあかねが昼食を届けることを思いついたのだ。

「こんにちわ〜。」

 あかねが元気よく武士溜まりに姿を見せると、鍛錬をしていたらしい武士達がいっせいにあかねの方を向いて皆一様にデレっとした笑みを浮かべた。

 京へ残ると決めてからあかねは何度か武士団へ顔を出している。

 だから武士団の人間なら誰もが一度はあかねの姿を目にしている。

 もちろん、若棟梁の新妻であることも知っているし、いつもは仏頂面の若棟梁がこの妻の前でだけは信じられないほど幸せそうに笑うのも知っている。

「神子様、お久しぶりです。今日は若棟梁に御用ですか?」

「そうなんですけど…。」

「若棟梁なら奥で仕事の報告を聞いてると思いますが。」

「あ、有難うございます。」

 あかねがにっこり微笑んでぺこりと頭を下げて奥へと走っていくと、その後ろ姿を武士団の武士達はデレっとした笑顔で見送った。

 そんなふうに見送られているとは知らないあかねは、いつも頼久が詰めている奥の部屋へとやってきた。

 すると中から大声が聞こえてきた。

「お願いします!一目お会いするだけでいいとおっしゃっているのです!」

 中から聞こえてきたのは頼久のものよりは幾分若い男の声だった。

 どうも必死に何かを頼み込んでいる様子だ。

 もちろんあかねは盗み聞きをするようなつもりはなかったが、中から聞こえる声があまりに大きな声で、しかも切羽詰った様子なのに気を取られてしまった。

 結果、あかねが身を乗り出したその時…

「神子殿…。」

 気配を察して奥から顔を出した頼久に見つかってしまった。

「あ、えっと…。」

「このようなところへ、どうなさったのですか?」

 あかねにやましいという思いがあるせいか、頼久の声は少しばかり不機嫌そうに聞こえる。

 みるみるうちにあかねの顔が悲しげに曇った。

「あの…これを…。」

 恐る恐るあかねが弁当の包みを差し出すと、頼久はすっとその包みを受け取って小首を傾げた。

「これは…。」

「お昼ご飯です。頼久さん、鍛錬とかしてるからおなか空いてるかなと思って…届けにきたんですけど、中から大声が聞こえてきて…それで……。」

 そこまで言ったあかねが大きな瞳に涙を浮かべて言葉に詰まったのを頼久は見逃さなかった。

 ぎょっとした顔で驚いた頼久は、そのままあかねの前へすっと歩み寄るとその顔をのぞきこむ。

「神子殿?泣いておられるのですか?」

「ごめんなさい…立ち聞きするつもりじゃ……余計なことしてごめんなさい…。」

「いえ!余計だなどということは決して!」

「でも頼久さん怒ってる…。」

「怒ってなどおりません!あ、いや、先程まで少々不愉快な話を聞いておりましたので…神子殿がこのように届け物をして下さることは決して不愉快ではございませんので、どうか…。」

 今度は頼久が困り果てた顔でうつむいてしまった。

 どんな言葉であかねを慰めればいいのかがわからず途方にくれているのだ。

 そんなことはよくあることで、あかねは懸命に涙をこらえながら頼久の顔を上目遣いにのぞいてみた。

 すると案の定、そこには途方にくれて捨てられた子犬のような目をしてこちらを見つめている頼久がいた。

「神子殿…。」

「あの、えっと…怒ってないならいいんです、大丈夫です。」

 あかねが涙をぬぐってそう言ってやっとの思いで微笑を浮かべると、頼久はほっと安堵の溜め息をついた。

「申し訳ありません、いくら不愉快な話を聞いていたからとはいえ、神子殿に不愉快な思いをおさせするとは…。」

「あ、いえ、私の勘違いだし…。」

「あのぉ、若棟梁?」

 新婚の二人が本人達は大真面目でも周囲から見ればいちゃついているとしか思えないような会話を交わしている間に、どうやらさきほどの声の主が痺れを切らせて顔を出した。

 声の通り、頼久よりは少しばかり若い武士団の一員らしい。

 さっきまであかねに子犬のような目を見せていた頼久が人が変わったように鋭い目で若者をにらみつける。

「行かぬと言ったら行かぬ。」

「若棟梁ぉ。」

 今度は若者の方が泣きそうな顔になった。

 あかねはそんな若者と機嫌が悪そうな頼久の顔を交互に見比べて小首を傾げた。

「えっと、どうしたんですか?」

 このあかねの発言で若者はまるで救いの神が現れたかのようにぱっと笑顔を見せ、頼久は困ったような顔で頭をかいた。

「神子様、実は…。」

 若者があかねに説明した内容はこうだ。

 若者はとある貴族の一人娘を警護すべく、ここ数週間その貴族の屋敷に通いつめ、娘のいる局の辺りを警護していた。

 するとあろうことか御簾の向こうから娘が若者に声をかけてきた。

 一介の武士に過ぎない若者に貴族の娘が声をかけるなど普通であればありえないことだ。

 だが、御簾の向こうから聞こえる娘の弱々しい声は、若者にあることを必死に訴えた。

 自分は重い病にかかってもう長くは生きられない、だからたった一つの望みをかなえてほしいと。

 そしてその望みというのが、今女房達の間で噂に上っているという源武士団の若棟梁に一目会ってみたいというものだった。

 娘に同情した若者はその願いをかなえてやるため、娘が会いたがっているその若棟梁本人に直談判していたわけだが、これがあっさりと交渉の余地もなく拒否されてしまったところにあかねがやってきたのだった。

 若者の説明を聞き終えたあかねはうるうるとしたつぶらな瞳でじっと頼久の顔を見上げた。

 頼久はこの新妻の訴えるような瞳にとても弱いが、別に頼久でなくてもあかねのこの瞳を見てはお願いを聞かずにはいられなかっただろう。

 そして頼久が予想したとおりのことをあかねは口にした。

「頼久さん、会ってあげるわけにはいかないんですか?重い病気なんでしょう?きっと外にも出られないし、かわいそうです。会ってちょっとお話しするだけなら…。」

 やはり。

 そう心の中でつぶやいて頼久は深い溜め息をついた。

 あかねがこの話を聞いて娘に会いに行けと言わないはずがないのだ。

「神子殿が慈悲深いお方であることはこの頼久、誰よりも心得ているつもりですが、今回ばかりは…。」

「ダメなんですか?どうして?」

 どうしてと聞かれると頼久は言葉に詰まる。

 どうしてその貴族の姫君に会いに行きたくないかといえば、それば相手の思惑が見えているからであり、そしてその思惑があかねに知れればおそらく悋気を起こされること間違いないからだ。

 そうとわかっていてあかねに誤解されるような行動を起こすことは頼久にはできない。

 だが、あなたが悋気を起こされるからです、とは頼久にはいえなかった。

「それは…。」

「それは?」

「その…わ、私のような一介の武士が貴族の姫君と言葉を交わすということは…。」

「相手がいいって言ってるんだからいいじゃないですか。」

「それはその…。」

「若棟梁ぉ。」

 あかねのお願い攻撃に若者のすがるような視線が追い討ちをかけて、頼久はうっとうめき声をあげた。

 これはどうも逃れようがないらしい。

「頼久さん、お願いします。」

 そう言って妻にぺこりと頭を下げられてはもう頼久に抵抗する術はなかった。

「……承知、致しました…神子殿がそこまでおっしゃるのでしたら…。」

「うわぁ、有難うございます!きっと娘さん、喜びますよ!」

「神子様、有難うございます!」

 あかねと若者が抱き合わんばかりの勢いで喜ぶのを見て深いため息をついた頼久は、すっとあかねを抱き上げるとそのまま奥の部屋へ入って若者を追い出してしまった。

 何やらきな臭い話を持ち込んできた上に、自分の目の前であかねと仲良く微笑み合う様を見せられるのはどうも気に障る。

 嫌な予感がする頼久の不機嫌さはすっかり若者にぶつけられたようで、部屋から若者を追い出した頼久はそれからの一時をあかねと二人、昼食を取りながら微笑んで過ごした。





 あかねは縁に座ってもう何度目になるかわからない溜め息をついた。

 重い病の娘さんに会ってあげてほしいと頼久に頼んでから一週間。

 頼久はあかねのお願いを聞き入れてちゃんとその娘に会ってくれたらしい。

 それはあの若者から話を聞いて知っている。

 問題はその後だった。

 頼久ははっきりとは言わないが、どうやらその貴族の娘から文が届けられているらしいのだ。

 あかねも一度だけ忍んでやってきた使いが頼久に文を渡すところを目撃した。

 頼久は返事を持たせずに使いを返したから、京のセオリー通り相手にする気がないので返事を出さずにいてくれているようなのだが、それでもやはり貴族の若い病弱な娘さんが夫に文をよこしているとなるとあかねとしてはいい気分ではない。

 でも会ってほしいと言ったのは自分であって、頼久には何の落ち度もないからなじることもできないのだ。

 だからこうして毎日頼久を送り出した後はずっと溜め息をついて暮らすことになってしまった。

 今のところ頼久には気付かれないようにいつも通りに笑って仕事へ送り出すことに成功しているが、それもいつまでもつか自信がなかった。

 そしてそんなあかねの前に、あかねと同様、どうやら落ち込んでいるらしいあの若者が姿を現した。

「あ、あなたは…。」

「…おはようございます、神子様…。」

「お、おはようございます。頼久さんならもう武士団の方へ出かけましたけど…。」

「いえ……その…。」

「はい?」

「今日は神子様にお話がありまして…。」

「私に?なんでしょう?」

「実はその…お詫びに…。」

「お詫び?」

「私がおかしな話を持ち込んだせいで神子様にご心痛をおかけすることになり、申し訳ありませんでした…。」

「へ?心痛?」

「はい。昨日、若棟梁に言われまして…そうですよね、夫が若い娘に会いに行って、おまけに文までよこされたのでは神子様のご機嫌が悪くなるのは当然です。そこまで考えが及ばず…。」

「え、ええっと……。」

 これは頼久に自分が落ち込んでいることがすっかりばれていたらしいと気付いて、あかねは顔を真っ赤にしてうつむいた。

 頼久が帰ってきたらどんな顔をすればいいかわからない。

「若棟梁に自分がとりなしたのでは意味がないからちゃんと説明してこいと…当然です…。」

「説明、ですか?」

「はい…実は…その、かの姫君が病というのは嘘だったようで…。」

「へ、嘘?」

「はい……その…私がいいように利用されたようで…。」

「……。」

「姫君はどうやらどこぞで若棟梁の姿を垣間見たらしく、どうしても若棟梁とその…まぁ、ありていに言えば関係を持ちたいと思われたようで…それで武士団の私をみつけて病だと嘘をついて同情をかい、若棟梁と会う算段をつけたということらしいのです…。」

「じゃぁ、そのお姫様は病気じゃなくて、死んじゃったりもしないの?」

「はい、いたってお元気で、毎日若棟梁に恋の歌を綴った文を届けてよこすそうで…。」

「あぁ…でも、よかったです、お姫様、病気じゃなくて。」

 そう言って苦笑するあかねに若者は一瞬目を大きく見開いて驚いて、それから寂しそうに微笑んだ。

「神子様……若棟梁は一つも返事はなさっていませんし、あれ以来一度も姫君のところへはいらっしゃってませんので。」

「あぁ、はい、それはわかってます。大丈夫。」

「…若棟梁は本当にご立派です、神子様のこともとても大事になさっています。尊敬します、本当に…かなわないです、どんなに頑張っても、ほんと、かなわないですよ…。」

 若者がそう言って寂しげに微笑むのを見て、あかねはあることに気付いた。

 だが、気付いたからといってあかねには何をすることも何を言うこともできない。

「本当に申し訳ありませんでした。姫君には若棟梁にはちゃんとした妻がおありなのでこれ以上文を出したりはなさらないようにと私の方から申し上げておきます。それでもまだ文が届くようでしたら、姫君のお父上に話しますのでご安心下さい。では。」

 若者はそれだけ言うと深々と一礼してあかねに背を向けた。

「あ、有難うございました。」

 慌てて礼を言うあかねにもう一度礼をして若者は去った。

 そんな若者の背中を見送りながらあかねは深い溜め息をついた。

「事情はお分かり頂けましたか?」

 急に背後からいつもの優しくて低い声が聞こえてあかねがはっと振り返ると、そこには穏やかな笑みを浮かべた頼久がたっていた。

「頼久さん…はい、よくわかりました。頼久さんはこうなるんじゃないかってわかっていたから、だから会いに行かないって言ったんですね?」

「こうなるとわかっていたわけではありませんが、神子殿が不愉快にお思いになるのではないかとは予想していました。」

「ごめんなさい、私何も考えないで会ってあげてなんて…。」

「いえ、お分かり頂ければいいのです。」

 落ち込むあかねの隣に座って、頼久はその小柄な体を膝の上に抱き上げた。

「そのようなお顔をなさらずとも。」

「私のせいで頼久さんにもあの人にも嫌な思いさせちゃって…。」

「は?私は神子殿が微笑んで下さりさえすれば今回のことなどたいしたこととは思いませんが……あの者も、ですか?」

 頼久の問いにあかねはこくりとうなずいた。

 だが頼久にはどうしてあの若者にあかねが嫌な思いをさせたのかがわからない。

 あかねは若者の望みをかなえてやったのだ。

「私、本当、鈍感。」

「は?」

「あの人、お姫様のこと、好きだったんじゃないかと思うんです。だからお願いを聞いてあげたかったんじゃないかなって。」

「……。」

「だとしたら、お姫様が頼久さんに会って喜んでるところとか、頼久さんがお姫様から文をもらって無視しているところとか、そういうのどんな気持ちで見てたんだろうって…。」

「神子殿…。」

「私が会ってあげて下さいなんて言わなければ、あの人も辛い思いをしないですんだのに…。」

 そう言って涙ぐむあかねを頼久はぎゅっと抱きしめた。

 こんな時にあのような若者のことまでも気遣うことができる、それこそがこの妻なのだと思うと愛しさが増す。

「一介の武士が貴族の姫君に懸想するなど、もとより辛いことにございます。あれも、それはよく承知しているはずです。今回のことがなくともあれは辛い思いをしたでしょう。私が果報者なのです。」

「はい?」

「一介の武士であるにもかかわらず、この京をお救い下さった龍神の神子殿であるだけでなく左大臣家の姫君でもあられる神子殿をこうして妻として抱くことを許されたこの身が果報者なのです。」

「ま、また頼久さんはそういうことを言って…私はそんなたいそうなものじゃないですってば…。」

「いえ、私もあれと同じように、ただただ神子殿に恋焦がれるだけで身を滅ぼす者となっていたのかもしれぬのです。それが普通なのですから。」

「そ、そんなことになるんだったら私、頼久さんと一緒にあっちの世界に帰っちゃいます!私のいた世界には身分なんかないし、武士ってお仕事もないんです!もうみんな同じ立場でみんなで楽しく暮らせちゃうんですから!」

 腕の中で必死になって訴える妻の顔を見て頼久は幸せそうに微笑んだ。

「頼久さん?」

「やはり私は果報者です。」

「もぅ、またそんなこと言って…。」

「大丈夫です。あれはまだ若いですから。いずれ本当に想いを通い合わせる女人に出会うことでしょう。」

 そう言って微笑みかければ腕の中の新妻は何やら不機嫌そうな顔で自分を見上げていて、頼久は慌てた。

 自分は今、何か言ってはいけないことを言ったのだろうか?

「じゃぁ、頼久さんも私に会う前、若い頃に想いを通い合わせることはできなかったけど片思いした人はいたってことですか?」

 一瞬目を丸くした頼久は、なるほどそういうことかと胸の内で納得してくすりと笑みをもらした。

「頼久さん?」

「おりません。私は己が強くなることと兄上の死と向き合うことで精一杯でした。ですので、女人に懸想している暇はありませんでした。ご安心下さい。」

「ご、ご安心って…別に心配してたわけじゃ…。」

 顔を真っ赤にしてうつむくあかねを頼久は腕の中に閉じ込めて、優しく抱きしめた。

 本当に自分は果報者だと思う。

 いつまでもこうして愛しい天女を抱きしめていることを許されているのだから。








管理人のひとりごと

頼久さんとうとう女心を理解するようになった模様です(笑)
あかねちゃんと一緒に暮らしているからじゃありませんよ?少将様の教育です(爆)
タイトルの嫉視はもちろん読んで字のごとく、嫉妬の視線という意味です。
あかねちゃんも武士団の若者も嫉妬にかられずにはいられませんでしたというお話。
まぁけっきょくのところあかねちゃんが嫉妬する必要はどこにもなかったわけですが(’’)




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