
「お前はこの家をなんだと思っているのか?」
「何って、源頼久の自宅だと思ってるぜ?」
夜、この家の主が自宅に帰るあかねを送り届けて戻ってくる頃を見計らってやってきた頼久の真の友は、何故か今ビールをあおっている。
もちろん、真の友=天真が自分で持参したものだ。
「ここは宴会場ではないぞ、しかも、お前は未成年でこの世界ではまだ酒は飲めないはずだが?」
「なぁにかたいこと言ってんだよ。京じゃ二人で飲んだことだってあっただろう?」
そういわれてしまうとなんとなく頼久は酒を飲むなとは強く言えず、自分の方へと放られた缶ビールを反射的に受け取ってしまった。
「お前も飲めよ、こっちの世界じゃ向こうみたいに部下に囲まれたりもしてねーんだろ?俺が愚痴くらい聞いてやっから。」
「愚痴るようなことは何一つないが?」
そう言いながら頼久は天真の向かいに座り、缶ビールを開けた。
「お前さ、あかねとはうまくいってんのか?」
「うまく、とは?」
「ケンカしたりしてねーかってこと。それ以上はつっこまねーよ、自分が虚しくなるから。」
「何故お前が虚しくなるのかはわからぬが、私が神子殿と喧嘩をするなど有り得ぬ。」
「………………。」
急に黙り込んだ天真に頼久は小首をかしげる。
その顔は明らかに何かに呆れきった表情を浮かべていた。
「どうした?」
「……お前、まさか、いまだにあかねのこと神子殿かよ。」
「そうだが?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ため息なのか叫び声なのかわからないうめき声を上げて天真は自分の髪をかきむしった。
『京にいた頃と違って頼久さん、余裕って感じなんだ』と顔を赤くしながら話したあかねの顔が脳裏にちらついた天真はぶんぶんと首を激しく横に振った。
「ぜんっぜん余裕じゃねーじゃねーかよっ!」
「なんの話だ?」
「お前なぁ、こっちの世界じゃあかねは龍神の神子殿じゃねーんだよ。いいか、家の中ならまだいい、いや、よくないが、百歩譲っていいことにする。でもな、外ではやめとけ。」
「何をだ?」
「あかねのことを神子殿って呼ぶなって言ってんだよ。お前、人前であかねのことそんな風に呼んだら精神疑われるか、妙な趣味の持ち主だと思われるぞっ。こっちの記憶たどりゃそれくらいのことわかるだろっ!」
「妙な趣味?」
「そこを追求せんでいい…。とにかく、外であかねといる時、あかねの話をする時はあかねのこと、神子殿じゃなくあかねって呼べ。」
「あかね殿…それは…。」
「あかね殿じゃねー!あ・か・ね!」
「……。」
とうとう頼久の眉間にシワが寄った。
どこが余裕なんだと心の中で叫びつつ、天真は深いため息をついた。
「そうしないとお前、絶対あかねに嫌われるからな!」
ダメ押しである。
こういわれればさすがの頼久も言われたとおりにしないわけにはいかないだろうという天真の予想は見事に当たり…
「善処する。」
頼久の返事は天真の思っていた通りのものだった。
ここから先は天真が黙々と飲み続けてつぶれてしまい、頼久はひたすら「あかね」とその名を呼ぶ練習を続けたのだが…
頼久があかねのことを名前で呼べるようになる日はまだまだ遠い。
管理人のひとりごと
名前ネタはありがちなんですが、これで書きたかったのはむしろ悶える天真(爆)
あと頼久さんの「善処する」かな。
そこはかとなく想像したのが妙な趣味について真剣に考える頼久さん(笑)
そのうち頼久さんにはあかねちゃんを名前で呼んでもらうシーン考えてあるんですが、まぁ、それまでの布石ということで♪
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