
「……。」
「何が言いたい?」
「いや、何が言いたいってこともねーけどな…。」
いつものようにあかねが帰った頃を見計らって酒を飲みに来た天真は額に入れて飾らんばかりにハンガーにかけて飾られているセーターを見て絶句した。
もちろん、それはあかねの手編みのセーターで、頼久への誕生日プレゼントだ。
天真は学校で休み時間にまでそれを編んでいるあかねを見ているから、すぐにそれがあかねの手編みのセーターだとわかったのだが…
まさか飾ってあるとは思わなかったので絶句してしまったのだった。
「お前、まさかこれこのまま飾っとくわけじゃねーよな?」
「そのようなことするわけがなかろう。着なければ意味がない。神子殿にも申し訳がないではないか。」
「まぁ、そうなんだが…。」
「今宵一夜はと思っただけだ。」
「ほんと、お前見てると…。」
「なんだ?」
「もうとっとと婚前交渉でも同棲でも、両親がいいっていってんだから結婚でもなんでもしてほしいぜ…。」
「……天真、お前今、何を言った?」
「大の男が女一人にここまでバカになるところを俺はこれ以上見たくねーって話だ…。」
「神子殿は私のような未熟者など、いくらでも翻弄しておしまいになるだけ美しくも気高きお方なのだ。」
「ハイハイ。」
一人セーターを眺めて幸せそうに微笑む頼久に深い溜め息をついて天真は缶ビールをあおった。
天真にとって頼久は剣の師であり、親しい相棒でもあり、一番身近にいる大人の男でもある。
あるのだが…
あかねのこととなるとその大人の男であるはずの頼久はもうデレデレで見るに耐えないのだ。
それでも、あかねのことを真剣に想っているのがその姿から伝わってくるから何も言えない。
「天真。」
「ん?」
呼ばれて天真が頼久を見れば、頼久はシャンパンのビンを天真へと手渡した。
「お。」
「付き合え。」
「おうよ。」
自分の方へと投げられたグラスをキャッチして、天真はシャンパンをグラスに注いだ。
それはもちろん、夕食の時に飲んでいたものの残りだ。
二つのグラスにシャンパンを満たすと、天地の青龍はグラスを打ち合わせてから一気に中身を空にした。
「誕生日、おめ。」
「お前に祝われてもな。」
「まぁ、そうだな。」
二人の八葉は笑みを交わして次のグラスを満たした。
窓の外には秋の月。
頼久が生まれた日の静かな夜は、こうしてゆっくり更けていった。
管理人のひとりごと
あかねちゃんがいなくて寂しいときには真の友がいるってことですね(^^)
恵まれているね、頼久さんっていうお話をもちまして現代版は終了でございます。頼久さんお誕生日おめでとう♪でした(^^)
お付き合い頂き、有難うございましたm(_ _)m
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