
あかねは御簾越しに庭を眺めていた。
庭に植えられている木々は綺麗に紅葉していてとても美しい。
そんな庭を眺めてあかねは一人微笑んだ。
こんなふうに静かで穏やかな時をこの京で過ごすことになろうとは。
「神子殿…。」
「あ、頼久さん、お仕事終わったんですか?」
「はい。」
まだ昼にもなっていないというのに珍しく夫が帰ってきたのであかねの顔にはぱっと花が咲いたような笑みが浮かんだ。
武士団の若棟梁として、頼久は忙しい日々を過ごしている。
午前中から二人一緒にいられることは珍しかった。
「神子殿…その…。」
「どうかしたんですか?」
自分の隣に座りながらも表情が冴えない夫の顔をあかねは下から覗き込む。
すると頼久は真剣な顔であかねを見つめ返した。
「神子殿はこの京に残るとお決めになってから本当に色々な努力をしておいでです。ですから…。」
「ですから?」
「たまにはこの頼久に、わがままの一つもおっしゃって頂けませんか?」
「へ?」
あかねは一瞬キョトンとして、それから切実そうな夫の顔を見て考え込んだ。
「えっと、別に、頼久さんにはいつもわがままきいてもらってますし…。」
「いえ、普段は私も忙しく、神子殿に不自由もおかけしておりましょう、たまには神子殿のお望みを聞かせて頂きたく…。」
「ん〜。」
何やら切実そうな頼久の顔を見て、あかねはじっくり考えた。
これはとにかく何かわがままを言ってあげないと頼久が落ち込みそうだということに気づいたからだ。
「じゃぁ、そうですね、手をつないで一緒に散歩してください。」
「は?」
「だから、手をつないで一緒に歩いて下さい。」
頼久は普段、あまりあかねと手をつないだり腕を組んだりして歩きたがらない。
身分が違うのに人前でそのようなことはと思っているということもあるが、それ以上に京の女性はそんなふうに男性と一緒に外を歩いたりはしない。
だが、あかねにしてみれば大好きな人とのデートは憧れなわけで…
「ダメ、ですか?」
あかねがおそるおそるそう聞いてみれば、頼久はまるで一大決心をしたかのように一つ深呼吸をすると首を横に振った。
「神子殿がお望みなのでしたら。」
そう言って自ら手を伸ばし、あかねの手をとると優しくあかねを立たせてくれた。
「じゃぁ、市を少し回って、お買い物して、あとはちょっと川原とか回って帰ってきましょう!」
「御意。」
頼久と二人手をつないであかねはゆっくり歩き出す。
大好きな旦那様と手をつないで歩く、ただそれだけのことなのに、今のあかねにはそれがとても幸せだった。
管理人のひとりごと
いつだって頼久さんはあかねちゃんの望みをかなえてあげたいんですが、あの不器用さなんで(笑)さりげなくは絶対無理(マテ
だからもうあきらめて直接聞いちゃってます(爆)
でも、あかねちゃんはあかねちゃんで別に今幸せなんで、特にわがままもないんです(’’)
そんなバカップルのお話(マテ
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