
からりと晴れた春の庭。
桜の花が満開で心地いい。
時折吹く風は春の気配がして、どこかやわらかかった。
そんな庭を眺めながらあかねは縁側に座っている。
隣には大好きな恋人がいて、これ以上ないほど穏やかだ。
「気持ちいいですねぇ。」
「はい。」
「桜が満開。」
そう、二人は満開の桜を楽しむためにこうして縁側に並んで座っているのだ。
桜はあかねの好きな花でもあり、頼久にとって意味深い花でもある。
だからこそ、こんなに気持ちのいい春の日には大切な人と二人、静かに桜を楽しもうとあかねが押しかけてきたのだった。
おいしいお茶を入れて茶菓子を用意して、二人で並んで座ってもうどれくらい時間がたったかわからない。
あかねが晩御飯も作って一緒に食べてから帰ろうか、などと考えている間に庭を囲っている垣根の向こうから声がした。
「お前らなぁ。」
「あ、天真君。」
垣根の上から顔を出して庭を覗き込んでいるのは天真だった。
「何?なんか変?」
「変ってわけじゃねーけど、お前らまるで老成した夫婦みたいだぞ。」
「へ?」
あかねが頼久の方を見ると頼久もキョトンとした顔であかねを見つめ返す。
「どこが?」
「どこがって…日向で茶を飲んでニコニコ笑ってるだけの二人ってお前…それ、縁側で猫抱いてボーっとしてる老夫婦、みたいだろうが…。」
「……そ、そう、かな…。」
「では天真、お前は我々がどうあればいいと言うのだ?」
あかねが考え込んでしまったので今度は頼久が苦笑しながら口を開いた。
「そうだなぁ、あかねなんかまだ女子高生だしな、もうちょっとこういい空気ってーか、恋人同士なんだから…いちゃ、つく…とか…。」
ここまで言ってようやく天真は自分が何を言っているのかに気づいて深い溜め息をついた。
「俺が悪かった、今すぐ消えるからそういうことは俺がいなくなってからにしてくれ。」
「へ?天真君?」
あかねの呼びかけにも天真は軽く手を上げて答えただけでさっさと歩み去ってしまった。
「変な天真君……よ、頼久さん?」
天真を見送って視線を頼久に戻せば、頼久が何やら楽しげにニコニコと微笑んでいて、あかねはさっきの天真の言葉の意味を考えて顔を真っ赤にした。
それは天真の言う通りの状況になるのも嫌ではないのだけれど、それはそれで恥ずかしい気もして…。
「数日は天気のいい日が続くようですから、まだしばらくこの桜は楽しめそうです。」
「は、はい?」
「ゆっくりと楽しむことに致しましょう。」
「あ、はい、そうですね。」
穏やかに微笑んで茶を飲む頼久を見て、あかねもやっと小さく溜め息をついて微笑んだ。
天真の言うような甘い時間もいいけれど、今はこうして穏やかに並んで花を眺めているのもいい。
ここは京のように命がけで戦うことなど必要のない場所なのだから。
あかねと頼久は二人ともそんな思いで縁に座り続けるのだった。
管理人のひとりごと
あの激しい戦いの中で想いが通じた二人ですから、平和なこっちの世界じゃもう老成ですよ(爆)
個人的には自分でつっこんでおいていたたまれなくなっている天真君がお気に入り(笑)
たまにはね、何もない静かな二人の一瞬を書いてみたかったのでした(^^)
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