
「まさかねぇ、あんなことになるとは思ってもみなかったよ。」
友雅は縁に座ってゆったりと扇で自分を扇ぎながら苦笑を浮かべている。
その隣にはあかねが怒ったような顔で座っていた。
「私だってもうどうなるかと思いましたよ。」
「しかし、頼久だとそんなことになるとはねぇ…まぁ、あの男、確かに無骨で一本気なところがあるからね。それにしても、まさか身を引くとはねぇ。」
「本当に頼久さんが出て行っちゃうんじゃないかと思って私、生きた心地がしなかったんですから。」
「それは頼久も同じ思いだったらしいがね。」
「はい?」
「君が頼久に恋の駆け引きを仕掛けたあの翌日、私のところに来て半日かけて愚痴っていったよ。神子殿を失うところであったとね。そんなことになったら自分は生きてはいられぬとあの男、物凄い勢いで私に噛み付いたよ。」
そう言って友雅はクスクスと笑った。
「わ、笑い事じゃないですっ!私だってもう大変だったんですから。」
「わかったわかった。もう二度と余計な入れ知恵はしないことにするから、白雪までそんなに私をいじめないでおくれ。」
「別にいじめてるわけじゃ…。」
「ま、あの堅物に恋の駆け引きをさせようとしたのが間違いだったか。」
「頼久さんはとってもまじめなんです!友雅さんとは違うんです!」
「これはまた、神子殿は私をなんだと思ってるんだろうね。」
友雅はそう言ってまた楽しそうにクスっと笑った。
もうこれは何を言っても無駄と悟ってあかねは深い溜め息をついた。
「最近…いや最近というか神子殿と婚儀を済ませてからかな、頼久は少し変わったと思ってね。」
「はい?」
「神子殿とはだいぶ主従ではない感じになってきたし、そろそろ恋の駆け引きを仕掛けても神子殿を他の男に渡してなるものかと躍起になるんじゃないかと思ったんだが、甘かったね。」
「…………。」
「どうしたんだい?私の白雪。」
「私の予想だとたぶん…。」
「ん?」
「頼久さんは一生かかってもそういうふうにはならないと思います…。」
一瞬キョトンとした友雅は次の瞬間、からからと声をあげて笑った。
「そうかもしれないね。いや、頼久の最愛の妻がそういうならそうなのだろう。わかった、もう二度と余計なことはしないと誓うよ。」
「頼久さんは、ああいう頼久さんだからいいんです、そういうとこが好きなんです。」
「これはこれは、神子殿まで私にお仕置きかい?」
「へ?」
「いや、ずいぶんな惚気を聞かせてくれると思ってね。」
「はぅっ。」
優しく微笑む友雅の前で、あかねはその顔を真っ赤にした。
自分が何を口走ったのかを思うと溶けてなくなりそうなほど恥ずかしい。
やはり友雅にはかなわない。
そう思いながらあかねはしばらく顔を上げることができなかった。
管理人のひとりごと
以前に少将様のせいで恋の駆け引きを試みて失敗したあかねちゃんと頼久さんのお話がありましたが、その後日談です。
別に少将様は悪いことをしたわけじゃないんですが、なんかあちこちから責められたみたいです(笑)
ま、責められても少将様は余裕ですけどね(w
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