
頼久は帰路を歩きながらほっと溜め息をついた。
何故かというと今日は本当に危うい場面に遭遇していたからだ。
いつものように左大臣の警護で出かけた頼久は左大臣の命を狙う刺客を防ぐために少々手間取ってしまった。
というのも、相手がかなりの手勢でやってきたからだ。
たまたま同行させていた武士団の者に若い者が多かったせいもあって、頼久の負担が大きくなった。
若い連中からなるべく敵を引き離そうとした結果、大人数相手に頼久が一団から離れなければならないことになり、おかげで左大臣の行列が屋敷へ帰り着いても頼久はまだ戦闘中という有様だった。
それでもなんとか敵を追い払って、犠牲者を一人も出すことなくこうして帰路につくことができた。
もし怪我の一つもしていたら、妻に泣かれてしまうところだったと安堵の溜め息をつきながら家路を急ぐ。
帰りが遅くなってもきっと心優しい妻は心底心配してくれるだろう。
そんな心配をさせてはいけないと頼久があかねの屋敷の門を早足でくぐると、縁に出て頼久を待っていたらしいあかねが飛び出してきた。
「頼久さん!」
大声で自分の名前を呼びながら駆けて来るあかねを一見して頼久はさっと顔色を変えた。
何があったのかあかねは、真っ赤に目を泣き腫らしていたのだ。
そのまま頼久に飛びついて泣きじゃくるあかねを頼久は慌てて抱きしめた。
「ど、どうかなさいましたか?」
「よ、頼久さんが行方不明で…連絡がつかないって……さっき、武士団の、人が……。」
泣きながらやっとそれだけ言ったあかねは頼久の胸にしがみついて泣くばかりだ。
頼久がはっと記憶をたどれば、左大臣邸へ戻るよりはあかねの屋敷へ直接帰った方が早かろうと、部下の一人にそのようにする旨を伝えただけですぐに帰ってきてしまった。
伝言を頼んだ部下が忘れているのか、伝言が遅れているのか、とにかくあかねは頼久が敵を引き離すために一団を離れたまま行方不明だと思っていたものらしい。
「神子殿、連絡が遅れて申し訳ありません。このように怪我一つなく、無事に戻りました故、どうかご安心下さい。」
「本当に、どこにも…怪我、ないです、か?」
しゃくりあげながらもやっと顔を上げて頼久を見上げたあかねに頼久は深くうなずいて見せた。
泣き顔までも美しい妻が愛しくてしかたなく、自分のためにこんなにも泣いてくれる愛しい人を頼久はさっと抱き上げて歩き出した。
「よ、頼久さん、歩けます!」
「はい、ですが、神子殿に涙を流させたはこの身の不覚、どうかこれより床につくまでは神子殿に御奉仕させて頂きたく。」
「ご、御奉仕なんて…そんな、だって…頼久さんお仕事で疲れてるのに…。」
「いえ、神子殿にご機嫌を直して頂くためならばどのようなことも致します。疲れなど、神子殿が笑顔一つ見せて下さればすぐに癒えます故。」
そう言ってにこりと微笑んだ頼久はどうあっても下ろしてくれそうにない。
あかねはあきらめて頼久の胸にもたれかかると安堵の溜め息をついた。
「それじゃぁ、今日はこれからずっと寝るまで側で一緒にお庭を眺めてください。凄く花が綺麗にたくさん咲いてるんです。」
「御意。神子殿のお望みのままに。」
頼久とあかねは二人で縁に並んで座り、酒など酌み交わしながら綺麗な夜の庭を眺めるのだった。
管理人のひとりごと
頼久さん、あかねちゃん会いたさに連絡忘れちゃってますよ(’’)
あかねちゃんにしてもたら怨霊と戦っていた頃のこともありますから、そりゃもう心配だったことでしょう。
そういうあかねちゃんの気持ちがわかるからこそ、頼久さんの過剰な御奉仕(w
まぁ、御奉仕の前に頼久さんは連絡することを忘れないようにしないとね(’’)
プラウザを閉じてお戻りください