
あかねが庭に下りて花を愛でている。
夏を迎えて綺麗に咲き誇った花はあかねをひきつけるに十分な美しさだ。
最近では京の普通の女性を見習って、御簾の内でおとなしくしていることもあるあかねだが、さすがによく晴れた夏の庭の誘惑には勝てなかったらしい。
頼久はそんなあかねを縁に座って微笑を浮かべながら見つめていた。
あかねは武士の妻になったのだからと気を使って御簾の内にいるように心がけてくれているようなのだが、頼久は今のままのあかねでかまわないと思っている。
水干を身につけて太陽のような微笑で外を歩き回っている姿こそあかねらしい。
それに、あかねができればそのように生活していたいと思っていることも知っている。
ならば、異界から舞い降りた天女には思うままにふるまっていてほしい。
あかねはあかねらしくあかねのままで、それが一番いい。
そう心の中でつぶやきながら頼久は柱にもたれていた体を起こして立ち上がった。
踏み出した足が向かうのは愛しい妻のもとだ。
庭の花を愛でている妻の隣に立って、頼久は共に花を眺めた。
「すっかり暑くなりましたけど、お花にはこの太陽の光が気持ちいいんでしょうねぇ。」
あかねは夏になってからずっと暑い暑いと言っている。
だから頼久は薄物をしたててあかねに贈ったのだが、あかねは恥ずかしいからといって着ようとしなかった。
今も朝から暑いと言っていたのにしっかり水干を着込んでいる。
「暑いのでしたら薄物を…。」
「絶対ダメです!あれ、体が透けて見えるじゃないですか!あんな恥ずかしいもの絶対着れません!」
「はぁ…。」
腰に手を当てて仁王立ちしたあかねにそう宣言されてはこれ以上頼久に逆らうことはできない。
ではどうやってこの愛しい人に涼んでもらえばいいだろうかと頼久が真剣に考え始めたその時、ゆるやかな風があかね二人の間を吹きぬけた。
そんな風に揺れたあかねの髪が美しくて、思わず頼久は手をのばす。
「頼久さん?」
「御髪がずいぶんとのびたのですね。」
「おぐし?あぁ、髪の毛のことですね。のばしてますから!藤姫くらい長くなるまで絶対切りませんから!」
「邪魔になるのでは?」
「いいんです、みんなみたいに長い髪にするんです!」
「神子殿、ご無理は…。」
「すぐ頼久さんはそうやって心配して、もう。私は無理なんかしてません。前から髪はのばしたいなぁって思ってたんですから。」
「神子殿…。」
「だから、あんまりたくさん心配しないで下さい。私、今とっても楽しくて、幸せなんですからねっ!」
「はい。」
愛しい人の笑顔に救われて、頼久は手にしていた髪にそっと口づけた。
『はぅっ』と声をあげて顔を真っ赤にしたあかねが愛しくて、頼久の口元にも自然と笑みが浮かんだ。
管理人のひとりごと
平安時代の女性は髪の美しさで美女かどうかがきまりましたから、あかねちゃんの知っている女の人はみんな髪が長いんですね。
で、恋する乙女としてはやっぱり好きな人には美人に見られたいと。
いうことで、頑張ってのばしてます(笑)
管理人も長いです(’’)
長い黒髪は美しいと思うのです(^^)
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