夢うつつ
 頼久は煌々と月の輝く夜空の下へと足を踏み出した。

 部下からの報告をまとめたり、次の左大臣の警護の手配などをしているうちにすっかり夜が更けてしまった。

 だから、土御門邸にある武士溜まりから自宅へと一歩を踏み出したときには既に深夜になってしまっていたのだ。

 頼久は深い溜め息をつきながらゆっくり歩き出した。

 今から帰ったのでは愛しい妻は先に眠りについてしまっているだろう。

 そっと褥に横になれば起こさずに隣で眠ることができるだろうか?

 それとも絶対に起こさないために別の場所で眠った方がよいだろうか?

 だが、同じ屋敷にこの世で最も愛しい人が眠っているというのに離れて眠ることなど考えられない。

 などなど。

 頼久の思考は歩いている間中、果てしなくあかねに向かって回り続けた。

 そしてどうするかの決心がつかないまま、表から中へ入って頼久は一瞬立ち尽くした。

 屋敷へ入ってすぐの床にあかねが座っていたからだ。

 座っていたというよりは柱にもたれて眠っているといった方が正しい。

 あかねは柱にもたれて目を閉じ、スースーと気持ちよさそうに寝息をたてていた。

 一瞬、幻を見ているのかと思った頼久が我に返って近づいてみてもあかねが目を覚ます気配はない。

 もう夏も終わり、夜になれば肌寒いというのにこんなところで眠ってしまうとはどうしたことかと小首を傾げながらも、このままあかねをここで寝かせておくわけにもいかないので頼久はとりあえずあかねを抱き上げた。

 すると閉じられていたあかねの目がすっと開いて、綺麗に澄み切った翡翠色の瞳が頼久をとらえた。

「頼久さんだ〜、お帰りなさ〜い。」

「ただ今戻りました。」

 どうやら寝ぼけているらしいあかねが無邪気な笑みを浮かべて見上げてくるのを見て頼久もまた頬がゆるんだ。

「すぐに寝所へお連れしますので、神子殿はそのままゆっくりお休み下さい。」

「いや〜。」

 そう言ってあかねは頼久の首に抱きついた。

 これには頼久が驚きで目を丸くする。

「み、神子殿?」

「ずーっと待ってたんだもん、やっと帰ってきてくれたのに…寝ちゃうなんて……。」

 頼久の首に抱きついたまま、あかねは再び寝息をたて始めた。

 頼久はどうやら自分のことを待ちくたびれてあんなところで寝てしまっていたらしい新妻が愛しくて、両腕に抱えたその華奢な体を大事そうに抱きしめると、そのまま寝所へ向かってゆっくりと歩いた。

 ゆっくり、なるべく揺らさぬように。

 愛しい人の眠りを妨げたりしないように。





管理人のひとりごと

あかねちゃん、待ち切れずに寝ちゃいました(笑)
普段は頼久さんにふさわしいお嫁さんになろうと背伸びしてますが、寝ぼけてるあかねちゃんは天然です(爆)
頼久さんとしてはどっちのあかねちゃんも可愛くてしかたないんですが(’’)
こんなこんなふうにあかねちゃんが待っていてくれると頼久さんは帰るのが楽しみでしかたないでしょうね(^^)




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