習慣
 頼久はまぶしい朝陽を見上げて微笑んだ。

 空は綺麗に晴れて心地いい。

 朝陽を見上げればさきほどまで隣で眠っていた新妻の顔が重なって見えた。

 頼久にとってはまさに太陽のような女性であるその妻の気配に気付いて振り返ると、そこにはまだ寝巻き姿のままで眠たそうに目をこすっているあかねの姿があった。

「おはようございます。」

「おはようございます、頼久さん、朝早すぎです。」

「私は朝の鍛錬がありますので、神子殿はもう少しゆっくりお休み下さい。」

「ダメです、朝餉くらい一緒に食べたいです…。」

「申し訳ありません、本日は左大臣様の警護がありますので朝餉はもう…。」

「えぇー、じゃ、もう出かけちゃうんですか?」

「はい、申し訳ありません。そのかわり、今日は帰りも早くなりますので。」

 そう言って頼久がなだめてもあかねはむっつりとふくれた顔で拗ねている。

 そんなところも可愛いのだが、などと考えている余裕は頼久にはなかった。

「では、申し訳ありませんが、行ってまいります。」

「待った!」

「はい?」

 もう行かなくてはと一歩踏み出した頼久は、あかねの不機嫌そうな声に呼び止められて振り返った。

 そこには愛らしく拗ねたままのあかねが仁王立ちしている。

「何か忘れてませんか?」

「は?」

「忘れてますよね?」

 数秒考えてあかねが何を言いたいのかがわかった頼久は深い溜め息をついた。

「頼久さん、忘れてましたよね?」

「はい…ですが…その……毎日というのは…。」

「毎日です!これからずっと頼久さんが帰ってくるまで一人でいるんですからいいじゃないですか…。」

 ずっと一人でいなくてはならないと拗ねてしまわれてはもう頼久に抵抗する手段はない。

 このまま出かけたりしたらあかねが元の世界へ帰ると言い出しかねないとまで思いつめて、頼久はやっと行動を起こした。

 階を上って縁に立つあかねに歩み寄ると、目を閉じたあかねに軽く口づける。

 これがあかねが婚儀を終えて最初に仕事に出る頼久に要求した毎朝の儀式だった。

「はい、行ってらっしゃい。」

「…い、行ってまいります…。」

 顔を赤くしてぎこちない足取りで出勤していく頼久をあかねは満足そうな笑顔で見送った。

 あかねの世界ではこれが普通でみんなやってるのだと言われてしまってはもう頼久には抗うこともできず、本当に毎日毎朝これなのかと思うと、嬉しいような恥ずかしいような複雑な思いで出勤する頼久だった。




管理人のひとりごと

まぁ、お約束です(’’)
新婚さんはやっとかないと(マテ
最初はこんなですが、ここから進化していく二人を見守ってください(w





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