お手を
 駅前通がイルミネーションで飾り付けされたというので、あかねが頼久のもとへ張り切って飛び込んできたのが三日前。

 どうしても二人で見に行きたいと粘られて、頼久は苦笑しながら承諾した。

 そして今日、頼久はいつもより少しだけしゃれた格好で家を出た。

 宵闇の道をあかねの家へ向かって歩くのはなんとも言えず幸せな一時だ。

 あかねを送っていく時は別れが近づくから寂しくもあるのだが、今はあかねに会いに行く、そのことが嬉しくてしかたがない。

 いつもはきりりとした表情のその端正な顔に微笑さえ浮かべながら頼久はあかねの家の前に立った。

 扉の前に立ってドアチャイムを鳴らすと、すぐに扉が開いてあかねが姿を現した。

 インターフォンでの対応があるとばかり思っていた頼久は突然のことで少しばかり面食らったが、それでもすぐにその顔に微笑を浮かべた。

 会いたくてしかたがなかった恋人の姿を目にしたのだから。

「こんばんわ、頼久さん。」

「お待たせ致しました。」

 可愛らしく挨拶をするあかねが玄関から出て鍵をかけるのを笑顔で見つめていた頼久は、ふと何か違和感を感じて小首を傾げた。

 秋らしくライトブラウンのワンピースを着たあかねはいつも通り愛らしいのだが、どこか違和感があるのだ。

「さ、行きましょう。もうだいぶ暗くなってきましたから、きっとイルミネーションも綺麗に見えますよ。」

 そう言ってあかねが楽しそうに歩き出したので、頼久も感じた違和感について追求するのはやめてあかねの隣に並んで歩き出した。

 あかねが楽しそうにしているのなら、頼久にとって多少の違和感は問題ではない。

 ところが、家の門を出るとすぐにあかねは小さな悲鳴をあげてつまずいた。

「きゃっ。」

 もちろん、元武士の運動神経で素早く安全にあかねを支えた頼久は、今日のあかねに感じた違和感の正体に気付いた。

 違和感の正体、それはあかねの足下にあった。

 今日のあかねはダークブラウンのパンプスをはいていたのだ。

 つまり、ヒールのせいで少しばかりあかねの身長が高くなったものだから、頼久のあかねを見る目線が高くなっていたのだった。

「あ、えっと…その…せっかく夜のロマンチックな道を頼久さんと二人で歩けるんだしと思ってその…ちょっとだけ背伸びしちゃって…でもだめですね、慣れないことしたせいでやっぱり歩きづらい…。」

 そう言ってあかねは悲しそうに微笑してから溜め息をついた。

 確かに、玄関から門までの間でつまずくのだから、まともに長時間歩けるとは思えない。

 これは一度家に戻って靴を履き替えるべきかとあかねがあきらめかけたその時、頼久の腕がすっとあかねの方へとのびた。

「神子殿、お手を。」

「はい?」

「つかまって下さい。私がお支えしますので。」

「えっと……。」

 これはひょっとしてエスコートというんじゃないだろうか。

 あかねは顔を赤くして考え込む。

「どうぞお手を。どのような世界でも神子殿をお支えするのは私でありたいのです。」

「頼久さん…はい、じゃぁ、有難うございます、遠慮なく。」

 あかねはそういうと差し出された頼久の腕に手を乗せた。

 がっしりとしたその腕に手を置いているだけでなんだかとても安心する。

 これなら絶対に転ぶことはない。

 そう安堵してあかねは頼久と視線を交わして微笑み合うと、二人同時に歩き出した。

 そして、綺麗なイルミネーションの中を、二人はゆっくりと時間をかけて歩くのだった。




管理人のひとりごと

まぁ、頼久さんにエスコートされたいってお話です(’’)
女性は最初にパンプスを履く時って絶対歩きにくいと思うんです!
ちなみに管理人は身長がもともと高いのであまり高いヒールはもともとはきません(’’)
歩きにくいくつでちょっとふらついた時に頼久さんみたいな人に支えてもらえるといいなぁと(’’)





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