面影
 はぁ、と、あかねが今日15回目の溜め息をついたのを頼久は見逃さなかった。

 いつものように頼久のもとを訪れたあかねは最初こそ楽しげに微笑んでいたものの、すぐに今のように溜め息をつき始めたのだ。

 はっと気付いて頼久を気遣いながらも、心ここにあらずといった感じだ。

「神子殿、何かお気にかかることでもおありですか?」

「へ?あ、ごめんなさい、私、せっかく頼久さんと二人なのに考え事なんかしちゃって…。」

「いえ、何か気にかかることがおありならお話下されば私も共に考えますが…。」

「あ、えっと、昨日、蘭に男の人を紹介されたんです。」

 ここで頼久の思考はいったん停止した。

 あかねが男を紹介された、しかも天真の妹である蘭にだ。

「すごーーーくステキな人だからって言われて…それでちょっとだけ会ってみたんですけど…。」

 ここで頼久の思考は更に停止しした。

 すごーーーくステキな男性に、あかねが会った。

 その事実が耳の奥でこだまする。

「ところがその人、なんていうかその……あぁ、わかりやすく言うと友雅さんに似てるんですよ。」

「は?」

 すごーーーくステキな友雅似の男。

 この時点で頼久の顔色は真っ青になった。

 そんな男があかねの周りをうろついているだけでも心配でならないというのに、蘭に紹介されたとあってはもう頼久の心配は頂点に達する。

「もっとストレートに言うと、そう!ホスト!どこから見てもホストなんですよ!」

「……。」

「親友としてはそういう人と付き合うのはやめた方がいいって忠告してあげるべきなのか、それとも暖かく見守ってあげるべきなのか悩んでるんです……って頼久さん?」

「忠告、ですか?」

 まるで魂が抜けたような顔できょとんとしている頼久を見て、あかねは見る見るうちに不機嫌そうに表情を崩した。

「頼久さん、まさか、私が蘭に付き合う相手として男の人紹介されたと思ってました?」

「いえ、その……。」

「思ってたんですね?もぅ、そんなことあるはずないじゃないですか、蘭は私達のことよく知っててちゃんと応援してくれてるんですから。」

「はぁ、申し訳ありませんでした…。」

「友雅さんに似てるのわかる気がするんです。私だってもし頼久さんと引き離されてたら、やっぱりよく似た人を好きになったかもしれない……って、それはないか。」

「ないのですか?」

「うん、私はないかな。やっぱり頼久さん本人じゃないと嫌だから。」

「神子殿…。」

「って、私のことはいいんです!蘭がこのままあの人と付き合っていいものかどうか…。」

「それとなく、友雅殿に似ているということだけ教えてみてはいかがでしょう?」

「へ?」

「気付いていないかもしれません。無意識の内やも。ならば友雅殿に似ているからその男を選んだとわかれば考えが変わるかもしれません。」

「なるほど。うん、そうしてみます。賛成とか反対とか、そういうのは私が口出すようなことじゃないですもんね。うん、そうします。」

 やっと憂いの元が消滅したからかあかねは明るい笑顔を取り戻した。

 そのことが嬉しくて、頼久も心から嬉しそうな笑みを浮かべる。

「私も神子殿と引き離されては生きては行けませぬゆえ。」

「わ、わかってますっ!だから頼久さんはここにいてくれるんじゃないですか…。」

 真っ赤になるあかねを抱き寄せて、頼久は目を閉じる。

 腕の中には暖かな幸せの源が確かに息づいている、そのことを確かめながら。




管理人のひとりごと

かなり前から考えていた、頼久さんの勘違いなお話でした(w
もし現代であかねちゃんがもし友雅さん似の人にとられそうになったらこんな感じです(w
蘭の恋愛相談にのるあかねちゃんは他にももうちょっとやってみたいなぁ(^^)





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