宵待ち
 あかねは一人、喫茶店に入ると窓際の席に座った。

 そわそわと辺りを見回してそれからメニューを手に取った。

 一人で喫茶店に入ることなどほとんどないからとにかく落ち着かない。

 いつもならこういう店に入る時は頼久が一緒で、あかねが注文するものを選ぶとすぐに店員を呼んで注文してくれるのだ。

 それが今日は一人。

 何を注文するか決めたら自分で店員を呼んで自分で注文をしなくてはならない。

 少しだけ緊張しながらとりあえず店員を呼んでコーヒーを注文して、あかねはほっと一息ついた。

 頼久と一緒ではない一人きりの外出はとても久しぶりで。

 落ち着かない視線をあかねは窓の外へ向けた。

 外はもう夕暮れ。

 町並みはどこも紅に染まってとても美しい。

 そんな町並みをあかねは頼久の姿を捜してずっと見つめ続けた。

 何故かというと、今日はここで頼久と待ち合わせをしているからだ。

 今日は外で打ち合わせがあるとかいう頼久とここで待ち合わせて、そのまま少しだけデートをしてレストランで食事をする予定だった。

 だから一人で喫茶店に入ることになってしまったのだけれど、久々に一人きりでこんなところにいるといつも恋人が一緒にいてくれることがどれほど幸せなことかを再認識して…

 そうなるともうどうしても恋人のことが恋しくなってしまって、あかねは深い溜め息をついた。

 運ばれてきたコーヒーを飲んでみても少しもおいしくなくて。

 あかねはただひたすら暗くなっていく町並みを眺め続けた。

 早く、一刻も早く恋人の姿を見つけたくて。

 すると、もう薄暗くなってきた町の人込みの中にあかねはその人影を見つけた。

 背筋を伸ばして歩く姿は綺麗だとさえ思う頼久のその長身を見つけた瞬間、あかねはバックを手に立ち上がっていた。

 会計をすぐに済ませて扉を開けるのももどかしく、体当たりするみたいにして外に転がり出るとちょうど今まさに店に入ろうとしていた頼久が目を丸くしてあかねを迎えた。

「どうか、なさったのですか?」

「頼久さんっ!」

「はい?」

 戸惑う頼久の首に抱きついて、あかねはしばらく動かなかった。

 こうして抱きしめる相手がここにいてくれることが嬉しくて幸せで、涙さえ出てきそうになる。

 そんなあかねを優しく抱きしめてからそっと離して、頼久は左腕を差し出した。

「さぁ、参りましょう。」

「はい!」

 あかねは大喜びで頼久の左腕をしっかりと抱きしめると、そのまま二人で歩き出す。

 あかねの胸の内に一人で喫茶店にいた時にあった不安やどうしようもない寂しさはすっかり消えてなくなっていた。




管理人のひとりごと

ちなみに管理人は一人で平気で店に入ります、食事もします(’’)
でもあかねちゃんはいつも頼久さんが一緒だったので一人が苦手になりましたというお話(w
それにしても店の前で抱きついて動かないのはどんなものでしょう?あかねちゃん…
目立ってたんだろうなぁ…




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