
頼久は急ぎの仕事をこれ以上はないというほどのスピードで終えて書斎から出てきた。
何故、急いで仕事を終えたかというと、今日は週末であかねが遊びに来ているからだ。
この春、あかねはめでたく高校2年生になり、クラス変えのごたごたが一段落したというので頼久の元を訪ねてきたのだった。
ところが、頼久の方には仕事がつまっていたので、とにかく先に仕事を片付けようと書斎へこもったのだ。
結果としてあかねが一人放置されることになってしまい、頼久は最速で仕事を片付けて現在に至る。
せっかく来てくださった神子殿につまらない思いをさせてしまったと慌てて書斎を出た頼久。
だが、リビングへと出てきた頼久が目にしたのは庭に立って幸せそうに桜を見上げるあかねの姿だった。
ベランダを開け放って、今が散り際の桜の下に立つあかねは、一年前よりも女性らしく美しくなっていた。
そんなあかねの方へ歩み寄り、縁側に立つとあかねが桜を見上げたまま口を開いた。
「この前授業でやったんです、死ぬなら桜の下で死ぬのがいいなっていう昔の人の歌で、花の下にてなんとかっていうの…。」
「願わくば花の下にて春しなむ、ですか?」
「そう、それです!」
くるりと振り向いてあかねが嬉しそうに微笑んだ。
「西行ですね。」
「さすが、頼久さん、詳しいですね。」
「いえ…西行のこの歌がどうかなさったのですか?」
「私も死ぬ時は春の桜が満開の時に桜の下でがいいなぁって、そう思ったんです。」
「死ぬ時などと、そのような…。」
「もちろん、もっと何十年も先の話ですよ?でも、こんな桜の下で死ねたら幸せなんだろうなぁ、そいうふうにその西行って人も思ったんだろうなぁって。」
「神子殿…。」
再び桜の方を振り返ったあかねは舞い散る薄紅の花弁の中で神秘的だ。
頼久は今にも天へと舞い上がりそうな恋人を見ていてもたってもいられずに縁側から庭へ降りると、背後から恋人を抱きしめた。
「よ、頼久さん?」
「神子殿がお亡くなりになっては私も生きてはいけませんので、桜の下にて春死ぬのはもっとずっと先のことになさって下さい。」
「だから先だって言ってるのに………。」
そう言いながらもあかねは背後のぬくもりが嬉しくて、そのまま頼久にもたれかかる。
そんなあかねの耳元でかすかに聞こえるかどうかの低い艶のある声が優しく囁く声が聞こえた。
「願わくば花の下にてあなたと共に。」
あかねは急に顔を真っ赤にしながらもこくりと一つうなずいた。
管理人のひとりごと
管理人の好きな歌の一つです。
って、管理人、歌苦手なんですけどね(’’)
私も花の下で酒飲みながら死にたいなぁ(マテ
頼久さんがさらっと恥ずかしいこと言ってますが、まぁいつものことです(’’)
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