花束
 最近頼久の様子がおかしい。

 あかねがそのことに気付いたのは三日前。

 一緒に過ごしていてもいつも頼久は心ここにあらず、といった感じなのだ。

 無口なのはいつものことだが、黙り込んでいるだけではなくて、何やら考え事をしているようで声をかけても返事がないこともある。

 どちらかというと頼久はあかねと一緒にいる時はあかねを見つめていることが多い。

 幸せそうに自分を見つめてくれている頼久を見ると、恥ずかしいのと同時に安心もしていたあかねとしてはこの三日、とても落ち着かない。

 何を考えているのか聞くのも失礼な気がするけれど、自分と一緒にいる間に大好きな人が何を考えているのかもとても気になって…

 もし、もしも頼久さんが他の女の人のこととか気になっているとしたら…

 そう考えてあかねはぶんぶんと首を横に振る。

 頼久さんは絶対そんな人じゃない!

 一人胸の内で強くそう断言して胸の辺りで両手を握って、こくこくとうなずいているとそこへ頼久が現れた。

「頼久、さん?」

 目を大きく見開いてあかねは頼久を見つめた。

 確か今日は用事があるから来られない、といっていたからだ。

 いや、それだけじゃない、頼久は両手いっぱいになにやら綺麗な花を抱えていて、刀が似合う大の男が両手いっぱいの花束を抱えているのだからその姿は異様とさえ言えた。

「どうか、なさったのですか?神子殿、何かうなずいておいででしたが。」

「いえ、なんでも……て、頼久さんこそ今日は用事があったんじゃなかったんですか?」

「はい、用が済みましたので。神子殿、これをお受け取り頂けますか?」

「はい?この花、私に、ですか?」

「はい。神子殿に何か贈り物をと考えたのですが、気の利いたものが思い浮かばず、確か神子殿は花がお好きだったはずと…。」

「有難うございますっ!」

 あかねはすっと立ち上がると頼久に駆け寄り、両手で花を受け取った。

 両腕で抱きかかえるように受け取ってもこぼれるほどの花が嬉しくて、あかねの目にうっすら涙が浮かんだ。

「み、神子殿?」

「嬉しくて…有難うございます。」

「いえ、喜んで頂けて安堵致しました。」

「あ、ひょっとして……ここ何日か頼久さんがずっと考え事していたのってもしかして…。」

「はい。神子殿に何をお贈りしようかと、そればかり考えておりまして…。」

 苦笑して見せる頼久の心が嬉しくて、あかねの頬を涙が伝った。

 だが、あかねの顔には笑みが浮かんでいて…

 花束を抱えて嬉し泣きの笑みを見せるあかねが愛しくて、頼久は花束ごとあかねを優しく抱きしめた。

 愛しい人はやわらかい花の香りがした。




管理人のひとりごと

つまりは「進物」の続きですね♪
頼久さんが抱えていた花束はこうしてあかねちゃんの手に渡りましたと。
これはもう頼久さんは一世一代の頑張りを見せた結果ですよ!(笑)
もともとこういうことは苦手そうですからね。
藤姫に言われたんじゃなきゃ絶対やらないでしょう(爆)
現代だと違ってくると思うんですが、何しろ京なので(’’)





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