頼久は朝から悩み続けていた。
正確にはここ三日、悩み続けている。
三日前、藤姫にあかねへ贈り物をするようにと命じられてからずっと悩み続けているのだが、何をあかねに贈ればいいのか全くわからないのだ。
どんなものであろうと自分に贈られた物に不満を見せるようなあかねでないことはわかっているが、どうせ贈るのならやはり喜んでもらえるものを贈りたくて、頼久は今も市をさ迷っていた。
ついた溜め息は数知れず。
もともと女人に贈り物などしたこともない頼久だ、一人で考えても埒が明かなかった。
あらゆる売り子が売っている物を吟味したが、どれもこれも皆同じように見える。
食べ物は喜ばれるかもしれないがあまり贈り物という感じはしない、櫛や髪飾りなら贈り物には最適かもしれないが髪の短いあかねには不必要な物のように思える。
各種着物、これも考えたが、袿にしろ水干にしろ、全て藤姫がそろえた逸品があかねの手元には山のようにある。
香や紙についても同じだ。
つまり、藤姫や友雅、さらには永泉辺りが日頃から何かとあかねに差し入れているものだから、高価なものはあかねにとって別段珍しいものではなくなっている。
美しいもの、雅なものもそうだ。
絵巻物も琴も逸品がそろっているに違いなかった。
そもそも、そのようなものを選ぶセンスが頼久にはない。
市を三周ほどして深い溜め息をついた頼久は結局、市を後にした。
あかねの顔を思い出し、何を贈ればあの清らかな笑顔を見せて下さるかと真剣に考える。
考えて考えて……
頼久の脳裏にあかねの笑顔が見えたのは、道端に咲く小さな花を見つけた時だった。
以前、あかねは道端に咲く花が綺麗だと言ってこの上なく愛らしい笑みを浮かべて見せてくれたことがあった。
そのことに気付いて頼久は駆け出した。
近くの山に綺麗な花が咲いていたことを思い出したからだ。
秋も深くなって木々の葉が赤く色づいている山へ入った頼久は、辺りを見回し、草むらへ駆け込むと美しい桃色の花を摘みだした。
数刻後、両手にいっぱいの撫子の花を抱えた頼久は、陽が暮れきる前にとあかねの屋敷へ向かって走っていた。
管理人のひとりごと
頼久さんがもしもあかねちゃんに贈り物をするとしたらというお話でした。
綺麗な着物や装飾品、香とか絵巻物とかそういうものはどうしても頼久さんからはイメージできませんでした(^^;
で、もし頼久さんが本当にあかねちゃんのことを考えて、考え抜いて何か贈り物をするとしたらこれだろうなという管理人なりの想像です。
お花、それが頼久さんのギリギリだと思います(’’(マテ
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