
頼久は一冊の本を真剣に読んでいた。
それは先日、あかねがとてもおもしろかったと力説していた小説だった。
タイトルは「アーサー王物語」
外国文学には詳しくない頼久は、当然のようにこれを読んだことがなかったので、早速図書館で借りてきて一気に読んでみたのだ。
あかねの話では、物語の中に出てくる騎士がとてもかっこよかったということで、頼久はあかねが連呼していた騎士の名前をしっかり覚え、その人物を中心に物語を読み進めていた。
あかねが連呼していた騎士の名は湖の騎士ランスロット、とにかく騎士らしい騎士でかっこよかったのだそうだ。
恋人の頼久としては小説の中の騎士だろうとあかねにかっこいいと言われた存在は気になるというもの。
真剣に読み進めること数時間。
頼久は物語を一通り読み終わると、ぱたりと音をたてて本を閉じて考え込んだ。
さて、自分が読んだ限りではこのランスロットという騎士、それほどいい男にも見えなかったのだが…
頼久が必死に考えることしばし、このランスロットという騎士の何がそんなにあかねの心をとらえたのかがわからない。
だが、先日、あかねがこのランスロットについて語っていた姿を思い起こし、頼久は何かに気付いて一つうなずくと、すっと立ち上がって玄関へ向かった。
扉の向こうにあかねの気配を感じたのだ。
「こんにちわ、頼久さん。」
扉を開けると案の定、そこには楽しそうに微笑むあかねが立っていた。
頼久はすっとあかねの前に片膝をついてかがみこむと、あかねの左手をそっと手に取り、その手の甲に軽く口づけて微笑んで見せた。
「ようこそお越し下さいました、神子殿。」
「よよよ、頼久さん!何やってるんですかっ!」
「神子殿がお気に召していたランスロットを真似てみたのですが、いけませんでしたか?」
片膝をついたままあかねを見上げる頼久は悲しげで、まるで捨てられた子犬のような目をしていて、あかねはうっと小さくうめいて顔を赤くした。
「いけなくはないんですけど…ちょっと恥ずかしいです……。」
頼久はすっと立ち上がると真っ赤になって恥ずかしそうなあかねの手を引いて中へ招き入れ、その体をそっと抱きしめた。
「騎士は素敵だと先日、神子殿がおっしゃっていたので…。」
「そ、それは…その……京で武士として私を守ってくれてた頼久さんに似ててかっこいいなぁと思っただけで……。」
腕の中で恥ずかしそうにそうつぶやくあかねの言葉に一瞬目を丸くした頼久は、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべて恋人を抱く腕に力を込めた。
「では、これからも、神子殿をお守りできるよう努力致します。」
「そ、そんな、ここは平和だし…守ってもらうとかそんな……でも……嬉しい、です…。」
あかねは頼久の背に腕を回して抱き返す。
そうして二人は薄暗い玄関でしばらくの間、抱き合い続けるのだった。
管理人のひとりごと
まぁ、あかねちゃんにとっては頼久さんはナイトなんだろうなぁと。
「アーサー王物語」は私も読みました。
おもしろいですが、ランスロットは言われているほどかっこよくないような(’’)
湖の騎士って言われちゃうとね、イメージがね…
まぁでも、意外性があって面白いと思うので、興味のある方は是非どうぞ♪
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