
あかねがいつものように頼久の家を訪れると、扉を開けて出迎えてくれた恋人は珍しく額に汗を浮かべていた。
もともとが体を鍛えている頼久だから、鍛錬中に邪魔をしてしまったかとあかねがもじもじしていると頼久はいつもと変わらずあかねを中に招き入れて、自分はすぐ縁側から庭へ出てしまった。
どうやら頼久は庭で何か作業中のようで…
「頼久さん、何やってるんですか?」
「先日、仕事で調べ物をしていまして、最近はこのような日曜大工がはやっているという話を見かけましたので、やってみようかと…。」
「頼久さんが日曜大工…。」
「はい。ちょうど作りたいものもありましたので。」
そういいながらも頼久はどうやら寸法通りに鋸で切り出しいたらしい厚い板を角材に釘で打ちつけている。
カンカンという小気味いい音が辺りに響いて、次々に釘が打ち込まれていくのをあかねは目を丸くして見つめた。
頼久の手際はとても素人とは思えないほどで、刀を握っていた武士の仕事とは思えない。
「あのぉ、作りたいものってなんですか?」
あかねにそう問いかけられて、やっと頼久の手が一度止まった。
「先日、厨で神子殿が物を取りづらそうになさっておいででしたので、踏み台をと思いまして。」
「え、あ、えっと…す、すみません、気を使ってもらっちゃって。」
「いえ、そもそも私の身長に合わせて家具を置いてありますので、神子殿には御不自由をおかけして申し訳ないと思っておりましたので。」
「それは、頼久さんの家なんですから当然ですよ……えっと……じゃぁ、私はお茶でもいれてきますね。」
あかねはほんのり頬を赤くしてキッチンへと駆け去った。
そんな愛しいあかねの後ろ姿を優しい笑顔で見送った頼久はすぐに作業を再開する。
鋸を挽き、釘を打ちつけ、ニスを塗って万が一にもあかねがこれで手に怪我を負ったりしないようにと気を配ることを忘れない。
そして全ての作業が終わった頃、あかねがいれた紅茶はリビングのテーブルの上に二つ、並べられていた。
二人でゆっくり紅茶を飲んでいるうちにニスが乾いて、頼久が作った踏み台はキッチンに置かれた。
早速完成した踏み台に乗ってみると、今まで届かなかった戸棚の上までしっかり手が届いて、あかねは嬉しくてくるりと踏み台の上で振り返ると、楽しそうに微笑んでいる頼久にいきなり口づけた。
「み、神子殿!」
「有難うございます。これでわざわざ頼久さんにとってもらわなくても大丈夫になりました。」
キスをされて真っ赤になっていた頼久は急に真剣な顔になったかと思うと、あかねを踏み台から下ろしてさっさと踏み台を庭へと放り出してしまった。
「頼久さん?」
「あれは私がいない時にでもお使いください。私がいる時は、どうか私をお呼びください。」
「そんな…。」
「一度でも多く、神子殿にこの名を呼んで頂きたいのです。」
そう言って微笑む頼久を見上げて、あかねは顔を真っ赤に染める。
そんなあかねが愛しくて、頼久はあかねの華奢な体をしっかりと抱きしめた。
管理人のひとりごと
つまり、頼久さんはいつでもどこにいてもあかねちゃんの役に立ちたいって話です(^^)
で、自分で作った踏み台のせいで役に立つ回数が減りそうで焦ったと(笑)
頼久さんにしてみればあかねちゃんのかわいい声で名前を呼んでもらうだけでも幸せなのですよ。
まぁ、それはきっとあかねちゃんも一緒でしょうが(^^)
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