
朝早く、鍛錬を終えた頼久が許婚のご機嫌伺いに向かおうと身支度を整えていると、そこへ珍しい使いがやってきた。
手渡された手紙を見てみるとそれは主筋に当たる藤姫からのもので、すぐに自分の局までくるようにとある。
すぐに使いが帰ったところを見ると返事はいらぬからすぐに来いということらしい。
訝しげに思いながらも頼久は身支度を整えてすぐに藤姫の局へ向かった。
頼久が気を引き締めて藤姫の局の前の庭に控えると、声をかける前に気配を察した藤姫が何かを手に御簾を跳ね上げて縁まで出てきてしまった。
頼久が慌てて片膝をつき、深々と一礼する。
「頼久!」
「はっ!」
「神子様に贈り物をしたことはありますか?」
「は?」
思わず顔を上げて目を丸くした頼久に藤姫は真剣な表情でにじり寄る。
「女性には贈り物です!」
「はぁ…。」
「頼久が心を込めて選んで贈り物をすれば神子様は必ず喜ばれます!」
「はぁ……。」
「『はぁ』ではありません!よいですか、頼久、一両日中に神子様に何か贈り物をなさい!」
「それは……。」
「わたくしは神子様にこの京で幸せにお暮らし頂きたいのです。そのためにはわたくしではなく、頼久の気遣いが必要なのです!わかりますね?!」
ジト目でにらまれて頼久はごくりと生唾を飲み込むと、深々と一礼する。
この幼姫は大切な神子様のこととなると一歩も後へは引かないのだ。
「よいですか!一両日中に必ず贈り物をなさい!あの友雅殿がそうするのが一番よいとおっしゃるのですから間違いありませんっ!」
「……。」
『あの』という部分を強調する幼姫の言葉に頼久は一瞬凍りついた。
この幼姫とあの少将殿はいったいどんな会話をしておいでなのか…
「頼久?」
「こ、心得ました。必ず、一両日中に。」
「わかればよいのです。では、すぐに贈り物を選びに行きなさい。」
「はっ。」
いつものようにきびきびと返事をして退出したものの、頼久は神子殿に贈り物などいったい何を贈ればよいのかと途方にくれつつ、幼姫の成長していく環境にも一抹の不安を覚えずにはいられないのだった。
管理人のひとりごと
藤姫、少将様に何か入れ知恵されていますよ?(笑)
そして神子様思いの藤姫に相変わらず振り回される頼久さんの図でした(^^)
小説部屋、その他にあります「賜物の行方」ともちょっとお話つながっていますので、興味のある方はそちらもお楽しみくださいませ♪
頼久さんが何を贈ったのかがわかります(笑)
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