あかねは一人縁側に座り、膝を抱えていた。
外は絹のような細い雨。
誰もいない恋人の家はどことなくひっそりしていて寂しい。
それでもあかねは窓を開け、じっと庭に咲く紫陽花を見つめていた。
長い梅雨がきても楽しめるようにと恋人が植えてくれた花だ。
おかげで毎日のように降る雨も、濡れた方が綺麗に見える紫陽花を見ていれば鬱陶しく感じることはない。
それでも…
一人で眺める庭、青く咲き誇る紫陽花、絹糸のような雨。
それら全てがなんだか寂しくて。
あかねはじっと膝を抱える腕に力を込める。
用があったわけではないから、家に恋人がいるかどうかは確かめずにきてしまった。
外出していることの方が珍しい恋人だから、雨が降っている今日は家にいるだろうと勝手に思っていた。
でも、訪ねてみると恋人の姿はどこにもなくて…
誰もいない家の中が寂しくてしかたがなくて…
だからせめて恋人が植えてくれた花を見ていれば気が晴れるかと思って眺めているけれど…
そんなことで心が晴れるわけもない。
数え切れないほどの溜め息をついて、膝の上に顎を乗せる。
もうすぐ夕暮れになる。
でも、会えないうちに帰宅するのはどうしても嫌で。
うっすらとあかねの目に涙が浮かび始めたその時、玄関で鍵が開けられる音がした。
あかねは飛び上がるように立ち上がると、そのまま玄関へと走っていく。
鍵を開けて入ってきた恋人が目を丸くしているのにはかまわずに、あかねはその首に抱きついた。
「お帰りなさい!」
「た、ただ今戻りました。お待たせしてしまいましたか?」
やっと会えた愛しい人の艶のある声にあかねはふるふると首を横に振る。
会えたから、こうして触れることができたから、会えなかった時間のことはもうどうでもいい。
今はただ、この愛しい恋人のぬくもりを感じていたかった。
管理人のひとりごと
たまに艶っぽい感じで(笑)
今回は珍しくあかねちゃんの方が頼久さんに会えなくて泣いちゃいました。
たまにはこういうのもいいかなと(笑)
うち、頼久さん視点が多いような気がしたので。
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