
二学期に入ってあかねはやたらと周囲の視線を感じるようになっていた。
京で怨霊なんかと戦っていたせいでそういう視線みたいなものに敏感になっているのかな?と考えたこともあったが、どうもそれだけではないような気がする。
一学期はそうでもなかったのに、二学期に入ってやたらとあちこちから視線を感じるのだ。
だからといってクラスメイトが自分に冷たく接するわけでもなく、あかねはなんとも言えない居心地の悪さを感じながら新学期始まってからの一週間を過ごしていた。
「ねぇ、天真君、私最近、凄くたくさんの視線を感じるんだけど……神経質すぎ、なのかなぁ?」
だから、この質問はある天気のいい昼休み、ごく自然に発せられた。
ここは高校の中庭。
あかねの目の前には森村兄妹二人が並んで座っている。
手にはお昼ご飯。
天真はかじりつこうとしていたサンドイッチを口から離して溜め息をついた。
「お前、クラスのヤツから何も言われてないのか?」
「何もって?」
「いや、その……。」
「うちのクラスでも噂になってるのに、当の本人がいるクラスで噂にならないわけないよねぇ。」
と横から口を出したのは蘭だ。
「噂って何?私、何かいけない噂たてられるようなことした?」
「違う違う。いけない噂ってわけじゃねーよ。」
「うん、しかもどちらかというとあかねちゃんっていうか……。」
天真と蘭が何を言いたいのかがわからなくてあかねは小首をかしげる。
確かにイジメられてたりしてるわけじゃないし、視線を感じるだけでそれ以外は今までと何も変わりはない。
だから悪い噂をたてられてるわけじゃないとは思うけれど…
「お前さ、夏休み直前に倒れただろ?」
「あぁ、うん、夏風邪ひいた時ね。」
「で、その時、早退しただろう?」
「そうそう、終業式だけだったのに早退しなくちゃいけなくなっちゃったんだよね。って、それがどうかしたの?」
天真はまだわからないかといったふうに深い溜め息をついた。
そしてそんな兄の想いを受けて口を開いたのは蘭だった。
「あのね、あかねちゃん、その時、迎えに来てくれた人、いたよね?」
「あぁ、うん。頼久さんが迎えに来てくれたけど?」
「それさ、窓から見てた子がいるらしいの。」
「えっ?!」
蘭に言われてあかねは慌ててその日の記憶を呼び出した。
熱でふらついていたあかねはよろよろとした足取りで学校を出て、校門の前で確か倒れそうになって…
「そ、それって…。」
「うん、頼久さんがあかねちゃんを抱きとめて、しかもそのあとお姫様抱っこで運んだの、見られてたってこと。」
「はぅっ!」
あかねは奇妙なうめき声を上げるとそのまま顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
まさかそんな場面を目撃されていたとは。
「あかね、覚悟しとけよ。そのうち、あれは誰?どんな人?恋人?みたいな怒涛の質問攻撃くらうからな。」
「うぅっ…。」
質の違ううめき声をあげるあかねに蘭が意地悪そうな笑みを浮かべて見せる。
「でもさ、いいじゃない、恋人ですって断言しちゃえば。そうしたらあかねちゃんに無駄にラブレター出して撃沈する男子減るし。」
「蘭っ!」
ペロっと舌を出して見せる蘭をにらみつけながらもあかねは本当にそうしようかな?なんて考えてしまっていた。
あの素敵な人は私の恋人ですと断言したら、きっとまた校門の前に頼久さんが迎えに来てくれたりしても元宮あかねの恋人って見てもらえるだろうから。
自分のものですって断言できちゃう、そんな気がして。
あかねは一人、頼久を自分の恋人だと断言する自分を想像して顔を赤くする。
そしてそんなあかねを見守る森村兄妹はその顔になんとも言えない苦笑を浮かべるのだった。
管理人のひとりごと
現代版の看病話のその後です。
そりゃね、学校の前でお姫様抱っこして連れ去られたら噂にもなります(笑)
しかも頼久さんですから、あの外見だけでも目立ってますから。
お姫様抱っこで更に目立ちましたから(爆)
で、管理人的には噂になっちゃった後の話も書いてみたくなりました(’’)
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