
7月7日。
いわずと知れた七夕の夜。
いつものようにチャイムが鳴る前に愛しい恋人の気配を感じた頼久が玄関の扉を開けると目を丸くして驚いた。
そこにはいつもとはかなり違った出で立ちのあかねが立っていたからだ。
「こ、こんばんわ。」
顔を赤くしてうつむき加減のあかねを見て絶句する頼久。
何も言わず、凍り付いている頼久に不安になったあかねがその表情を曇らせてやっと頼久は慌てたようにその身を横に寄せた。
「な、中へどうぞ。」
そう言ってあかねはなかなか中へは入ろうとしなくて、頼久は小首をかしげた。
「どうかなさいましたか?」
「変、ですか?」
「は?」
「この格好、変ですか?」
「とんでもありません!よくお似合いです!ただその…普段とは違い、その……あまりにお美しく…なんと言っていいかわからず……申し訳ありません。」
顔を赤くしてしどろもどろになる恋人を見てあかねはやっと微笑を浮かべると、家の中へ入った。
頼久が何故あかねを見て絶句したかというと、今夜のあかねは浴衣を着ていたからだった。
白地に紺と赤の可愛らしい花の柄の入った浴衣はあまりにもあかねに似合っていて、頼久は見惚れて一瞬絶句してしまったのだった。
家の中へ入ったあかねはそのまま開け放たれている縁側にペタリと座ると、晴れ渡っている夜空を見上げた。
七夕の夜の星空をゆっくり二人で眺めようと言い出したのはあかねの方で、日付が変わる前には送っていくと頼久があかねの両親と約束した結果、それが実現したのだった。
「綺麗に晴れましたよね。」
「晴れましたね。」
「これで織姫と彦星はちゃんと会えますね。」
「はい。」
頼久は応えながらあかねの隣に座った。
こうして二人で並んで座っている、それだけで頼久の心は温かい思いで満たされるのだ。
「そうだ!」
急に何を思い立ったのか、あかねはすたすたと台所へ姿を消し、数分後、徳利と杯を乗せた盆を持って戻ってきた。
「はい、どうぞ。」
「は?」
「せっかく綺麗な夜空なんだし、こういう時ってお酒飲むとおいしそうじゃないですか?」
と、にっこり微笑んで言われては頼久も礼を言って杯を受け取るしかなく、愛しい人の酌で頼久はゆったりと日本酒を飲むことになった。
「あまり量を頂くわけには参りませんが。」
「あぁ、私を送っていくこと気にしてるんですね。大丈夫、頼久さんお酒に強いですもん。これくらいじゃ酔っ払って歩けなくなったりしないでしょう?」
「では、それ一本だけで。」
「はい。」
嬉しそうに酌をする恋人の輝かんばかりの美しさに頼久は目を細める。
この人のこの姿を目にするのが自分一人であることが嬉しくて。
「神子殿が成人された折には杯を共にして頂けますか?」
「もちろんです!私、お酒弱いと思いますけど……。」
「成人された後でしたら、ご両親にお許しさえ頂ければこちらにお泊り頂いてもかまいませんので。」
「はぅっ。」
爽やかな笑顔でさらりと「お泊り」などと言われてしまって、あかねは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「どうかなさいましたか?」
「な、なんでもないです…。」
どうやら自分がどんなことを言ったかに気付いていないらしい恋人を見て更に顔を赤くしたあかねは、空になった杯に酒を注いでまたうつむく。
どうやらこの恋人といる限り、穏やかに星空を見上げるなどということはできそうもなくて…
あかねは恋人から与えられる嬉しいやら恥ずかしいやらの言葉の数々に顔を真っ赤にして七夕の夜を過ごすことになるのだった。
管理人のひとりごと
やっぱり七夕は浴衣でゆったりと(笑)
色っぽくお酌をするあかねちゃん、いかがでしょう?(マテ
縁側で夜空を眺めながら一緒にお酒を飲むなんておいしそうです(爆)
あかねちゃんがお酌なんて京では考えられない風景かもですねぇ。
頼久さん京では従者根性抜けないから(’’)
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