
静かな夏の夜。
あかねは頼久と二人、心地いい夜風に吹かれながらゆっくり歩いていた。
空には星が綺麗に見えて、昼間の暑さが和らいだ夜はとても気持ちいい。
夏休みだからと門限を遅くしてもらったあかねは、頼久と二人で夕方からデートに出かけたのだった。
昼間はあまり外へ出たがらない頼久だが、夕方から散歩がてら出かけるくらいならと承知してくれたからだ。
ちょっとウィンドウショッピングをして、レストランで食事をしてそれから家族へお土産のケーキを買っての帰り道。
時間は午後9時を少し回ったところ。
門限まではまだ少し時間があったし、頼久という頼れる恋人が一緒なこともあってあかねは少し遠回りをして歩いて帰りたいと言い出した。
少しでもあかねと一緒にいたい頼久に異存があるわけもなく、二人はゆっくりと腕を組んで歩いた。
「あ、ここ…。」
賑やかな大通りから外れて少したって、あかねは足を止めた。
近道になるからと昼間はよく自転車で駆け抜けたりしている公園の前にやってきてすぐ、あかねの顔色は青白くなった。
何事かと頼久が隣の恋人の顔をのぞきこんだが、あかねは弱々しい微笑を浮かべただけだ。
「どうかなさいましたか?」
「な、なんでもないです。行きましょう。」
心配そうな頼久にはかまわずに、あかねはいつものように頼久の腕を引いて公園の中へ入った。
夜の公園は危険だからと一人で歩くことは絶対にないけれど、今は頼久が一緒だという安心感があった。
京では怨霊からだって自分を守ってくれた人。
絡んでくる酔っ払いくらい敵じゃないくらい強い人が一緒なのだから何の心配もない。
と、普段なら思ったはずなのだが、今のあかねは頼久の左腕に抱きついた状態で何かにおびえているようなのだ。
そんな様子の恋人が心配で頼久はずっとあかねの様子をうかがっていた。
「何か心配なことでもおありですか?」
とうとう頼久がそう訪ねてもあかねはふるふると首を横に振るばかりだ。
二人が歩く公園はというと、ところどころに街灯があるが、それでも全体は薄暗い。
ほとんど人気もなくてとても静かだ。
普通なら恋人同士、ちょっといい雰囲気になったりするのかもしれないが、今のあかねはそれどころではないらしい。
どうしたものかと頼久が考え込み始めたその時、背後でがさりと葉の鳴る音がした。
「きゃっ!」
小さな悲鳴をあげてあかねが頼久の腕にしがみつく。
「神子殿?どうかなさいましたか?」
と、こちらはあくまでも冷静な頼久だ。
「今、後ろに何か…。」
「風で葉が鳴っただけです。なんの気配もありません。ご安心を。」
そう言って頼久が微笑んで見せてもあかねは小さく体を震わせていて何かに怯えているらしい。
頼久は今は物書きなどしているが京では源武士団の若棟梁を務めていた身だ、人がいれば気配でわかる。
「何もいはしません。気配でわかりますのでご安心を。」
「でも……お化けの気配はわからないでしょう?」
「は?」
「こ、ここ、この前からお化けが出るって噂で……。」
そういったあかねを見て頼久は一瞬目を丸くして驚き、それからくすっと笑ってしまった。
京では怨霊を封印して歩いていた伝説の少女がお化けを恐がるとは思いもしなかったからだ。
「頼久さん!笑い事じゃないです!お化けの気配なんてわからないでしょう?」
「たとえ神子殿のおっしゃるお化けが出ようと、怨霊が現れようと、この頼久、必ずお守り致しますのでご安心を。」
頼久はそう言うといきなりあかねを横抱きに抱き上げてすたすたと歩き出した。
「よ、頼久さんっ!」
「早くこの公園を抜けてしまいましょう。公園の外までお連れしますので神子殿はお化けとやらを恐れずにすむよう、目を閉じていてください。」
世界で一番頼りにしている人にそう言われて、あかねは言われたとおり目を閉じた。
すると頼久の腕の中は思っていた以上に安心できて…
あかねはうっとりと頼久の胸にもたれて、幸せそうに微笑んだ。
そんな恋人の表情が嬉しくて、頼久は公園を出てもあかねを離さず、結局恥ずかしがるあかねを自宅まで横抱きに抱いたまま送り届けてしまうのだった。
管理人のひとりごと
目立つ!目立ちますって頼久さん!(笑)
いくら夜だからて女の子をお姫様抱っこして歩いてりゃ目立ちます(’’)
あかねちゃんはこう見えて現役女子高生ですから、そりゃお化けは恐いですよ(笑)
怨霊は恐くなくてもお化けは恐いんです(爆)
でも頼久さんが守ってくれるので最終的には大丈夫です(マテ
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