
夏休みに入るとどうしても翌日が休みという気の緩みも手伝ってあかねの帰宅時間は遅くなった。
ちゃんと夏休み中も勉強をするということと、暗くなったから必ず頼久が送り届けるという条件付で門限を22時までのばしてもらったあかねは毎日のように門限ギリギリに帰宅する。
今も、夜道を頼久と二人、手をつないで歩いているところだ。
ゆるやかな夏の夜風が心地良くて、二人はついついゆっくりと歩いてしまう。
普通に歩けば15分で到着するあかねの家への道のりを30分ほどかけてゆっくり歩くのは、もう夏休み中の日課のようになっていた。
あかねが頼久の家へ行くのに自転車を使わないのはこうして帰りはゆっくり手をつないで歩きたいからだ。
始めのうちは手をつなぐことにあまり乗り気ではなかった頼久も、今ではあかねが手を出すと自然と握ってくれるようになった。
頼久の手は大きくて優しくてあかねのお気に入りだ。
にこにこと幸せそうに微笑みながら歩くあかねを隣で頼久も幸せそうに見守っている。
会話はほとんど一方的にあかねが話していることが多いが、今のように何も言わず、黙っていることも多かった。
何も言わず黙っていても、その静けさが二人には苦にならない。
言葉のないその空間にさえもお互いの想いが通っているような気がして、二人はいつしか黙っている時間を楽しむようになっていた。
「あ。」
そんな中、あかねが急に声をあげて足を止めた。
頼久が何事かとあかねの方を見ると可憐な恋人は頭上を仰ぎ見ているではないか。
「星、凄く綺麗ですよ。いつもよりたくさん見えるみたい。」
言われて頼久も頭上を見上げると、確かにそこには綺麗な星が見えた。
「冬より夏は星空が見えにくいものですが、今夜はよく見えますね。」
「ですよね。あれ、あの三角が夏の大三角ですよね?」
「私も詳しくはありませんが、おそらくそうでしょう。」
あかねはあいている方の手で夜空を指差して楽しそうだ。
「こういうの、いいですよねぇ。そのうちゆっくり二人で星空を見れたらいいのに。」
「そうですね。」
「冬になったらもっと空って綺麗ですよね?お泊り会しましょうか?」
「はい?」
あまりの急な提案に目を大きく見開いて慌てる頼久。
そんな恋人の姿を見てあかねはクスッと微笑んだ。
「この前、蘭と詩紋君も望遠鏡とか買ってゆっくり星空を眺めてみたいねって言ってたんです。だから、蘭と詩紋君と、天真君も呼んで、そのうちみんなでお泊りしながらずーっと一晩中星を眺めるっていうのもいいかなって。」
「なるほど。」
なんとか冷静さを取り戻した頼久は何故か自分が苦笑しているのに気付いて更に慌てた。
お泊り会と聞いてあかねと二人きりで過ごす夜を想像してしまっていたからなのだが、そのことをどうしてかあかねには悟られたくなくて慌てて視線を夜空へ戻す。
そこに広がるのは美しい夏の星座達。
隣であかねもまた空を見上げれば、なんだかこの世界に二人しか人間がいないかのような錯覚さえ起きて、とても幸せな気分だ。
「さあ、そろそろ帰りませんと、門限を過ぎます。」
頼久がやさしくあかねの手を引けば、名残惜しいあかねも歩き出さずにはいられない。
あかねの顔から笑顔が消えたのに気付いて頼久は苦笑した。
「星空は逃げて行きはしませんから。夏休みが終わるまでに皆を集めての天体観測、考えてみましょう。」
「本当ですか?」
「はい。」
「うわぁ、じゃ、明日、みんなに連絡してみますね。」
「承知しました。」
嬉しそうに微笑むあかねの笑顔が嬉しくて、頼久の顔には笑みが浮かぶ。
あかねの家まであと少し、夜道は幸せそうな二人に数分だけ二人きりの時間を与えるのだった。
管理人のひとりごと
そりゃね、頼久さんも男の子なんで(笑)
大好きなあかねちゃんとお泊りとなると動揺もします。
もちろん天然なあかねちゃんはそういうことは全く想像してないんですけどね(笑)
で、そのうちみんなでお泊りの図も書けるといいなぁと思ってます(^^)
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