変わらぬ想い
 夏休みを迎えていつものメンバー、あかね、頼久、天真、蘭、詩紋の五人は頼久の家に集合し、詩紋の手作りケーキを食べながらだらだらとしていた。

 というのも、どこかへ出かけようにも暑さのあまり外へ出る気にならないからで、頼久の家に集合しても特にやることもなかったからだ。

 さすがに何もやることがなさ過ぎてイライラし始めた天真がボードゲームを用意すると言って出て行き、あかねはそれならばと全員分のアイスティをいれるとはりきって台所へ姿を消したのが3分前のこと。

 リビングに残ったのは頼久、蘭、詩紋の3人。

 何することもなくテレビのチャンネルをピコピコと変えていた蘭はあまりの暇さに思わずふと口を開いた。

「頼久さんって京にいた頃、付き合ってた女の子とかっていました?」

 何を言い出すのか?と言いたそうな顔で小首をかしげる頼久。

 そんな頼久と蘭を見比べて困ったような顔をしたのが詩紋だ。

 先日から蘭のおかげであまり嬉しくないめにあっているだけに詩紋は慎重だった。

「硬派そうに見えるからどうだったのかなぁって、ちょっと思っただけなんで、答えづらかったらいいです。」

「答えづらくは…。」

「お、それ、俺も聞きてー。」

 そこへ帰ってきたのはボードゲームを抱えて帰ってきた天真だ。

「早かったな。」

「おう、前、飲みに来たときに暇だなと思ったんでこの前持ってきて、勝手に二階のあいてる部屋に放り込んでおいたんだ。」

「……。」

「で、どうなんだよ?」

「どう、とは?」

「京にいた頃、付き合ってた女がいたのかって話。」

「いない。」

「一人もか?」

「ああ。」

 しーんと静まり返った3人に頼久は訝しげな表情を浮かべた。

 何やら3人ともかなりしらけているようなのだが、頼久にはその理由がわからない。

「なるほどね、頼久さんって女にあんまり免疫ないんだ。」

「免疫?」

 蘭の発言はますます頼久を混乱させた。

「じゃぁ、こっちの世界にきて、京より色々な女の人見ることになったでしょ?綺麗な人とかおしゃれな人とか。あかねちゃんは確かにかわいいけど、綺麗な女の人見て目移りとかしません?ちょっといいなぁって思ったりとか。」

「うわ、バカ、お前…。」

 蘭の発言に天真が慌てたのもつかの間、頼久の顔は真剣に不機嫌そうになり、ついであかねがアイスティの入ったコップを五つ持ってこちらへ歩いてくるのにも気付かずに頼久は大声をあげていた。

「神子殿ほどお美しい方は他におられない!神子殿ほどお優しく清らかな方もだ!私には神子殿というこの世で最も尊き女性がいて下さるというのに、他の女に目移りなど有り得ぬ!」

「頼久さんっ!な、なんてこと大声で言ってるんですかっ!」

 今にも紅茶を乗せたトレイをひっくり返しそうになったあかねが真っ赤な顔で抗議するのを不思議そうに見上げる頼久。

 そんな二人を見て蘭はクスクスと笑い、天真と詩紋は「あ〜あ」と言いたそうな顔で深い溜め息をついた。

「なんてこと、とおっしゃられましても…真実を言っただけですが?」

 平気な顔でそう言う頼久にあかねは真っ赤になり、残された3人は同時に深い溜め息をついた。

「…蘭、頼むから二度とこいつにその手の質問をしないでくれ…。」

「うん…お兄ちゃんに言われなくても二度としない…。」

 この兄妹の会話の意味も頼久にはわからなくて、その眉間にシワが寄り始める。

「も、もういいから、はい、お茶!」

 あかねが全員分のアイスティをテーブルに置くと、天真、蘭、詩紋はすぐにそれをごくごくと喉を鳴らして飲み干した。

「何度質問されても私の答えは…。」

「あーーーー、頼久、その話はもういいから、ゲームやろうぜ、ゲーム。」

 場の空気が読めないらしい頼久に天真がボードゲームを広げるのを慌てて手伝わせると残る三人はほっと安堵の溜め息をついた。

 ところが…

「よくはない。私は神子殿以外の女性に心変わりなど絶対にしないし、神子殿をこれ以上ないお方といつも思っている。これだけは…。」

「頼久さん!それはもうよーくわかってますからっ!」

 これ以上この話を引っ張られたら恥ずかしくて消えてなくなりそうだったあかねが真っ赤な顔でそう叫ぶと、頼久はぱっと嬉しそうに微笑んで「はい。」とだけ言うとおとなしく天真を手伝ってボードゲームを広げた。

 そしてたどたどしくもゲームは始まり…

 ゲームに参加しなかった頼久は愛しい恋人が友人達と楽しむ様を優しい微笑を浮かべて見守っていて、あかねは心行くまでゲームを楽しんでいるようで…

 そんな二人を見比べて、残る3人は深い溜め息をついた。

 そして心の中で、二度と頼久に心変わりはしないのか?などという質問はしないと決意するのだった。




管理人のひとりごと

恥ずかしいセリフだろうがなんだろうがあかねちゃんを褒める時の頼久さんは全力です(爆)
一度は触れてみたい頼久さんの過去の女性関係なわけですが、お兄ちゃんのこともありましたしね、そりゃあなた、女に惚れてる余裕はありませんて♪
八葉中一番硬派そうですしね(^^)





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