
「神子殿。」
頼久はやってきてすぐにキッチンでお茶を淹れてきてくれた恋人を必死の覚悟で呼んだ。
「はい?」
お茶を頼久に差し出して隣に座ったあかねは小首を傾げて頼久を見つめている。
いつになく真剣な表情の頼久にただきょとんとするばかりのようだ。
頼久は愛らしいあかねのそんな表情に自分がすっかりとろけてしまう前にとばかり次の言葉を口にした。
「この世の誰よりも何よりも、この頼久、神子殿だけを深くお慕いしております。」
「はい……へ…あ、はい…はいっ!」
突然の告白に一瞬何を言われたのかわからなかったあかねは、数秒後に言葉の意味を悟って顔を真っ赤にした。
頼久は京の人だったからというよりはたぶんその資質のせいで、回りくどいことはいっさいしない。
というかできない性分だ。
だからこうしてストレートな表現をされるのはよくあることなのだけれど…
それでもここまで大仰なことは珍しくて、慣れてきたと思っていたあかねでさえも顔を真っ赤にしてしまった。
テレにテレて、そしてあかねが我に返ってみれば、一つの問題が浮かび上がった。
何故、頼久はいきなりこんなことを宣言したのか?
あかねのこれまでの経験上、頼久がこういうことを言い出す時は何か不安なことがあったり、あかねを心配したりした場合だ。
そのことに思い至ってあかねは姿勢を正すと、頼久の顔を覗き込んだ。
「そういうふうに言ってもらえるのは嬉しいんですけど、頼久さん、何かあったんですか?」
心配そうなあかねの視線を受けて、頼久の表情がやっとやわらいだ。
今まで眉間にシワを寄せかねない真剣さだった頼久はふっと表情をほぐすと、次の瞬間にはあかねの大好きな微笑を浮かべて見せた。
「天真に言われたのです。わかってくれていると思って想いを伝えずにいると、女性は離れていくものだと。」
「へ…。」
「特に私のような朴念仁は常日頃からそういった想いを伝えるという行為が足りていないに違いないとも。」
「……。」
「言われてみれば確かにと思い当たる節がありましたので。」
「頼久さんは別に朴念仁じゃないです…ちゃんといつも好きって言ってくれてます…。」
「そう、でしょうか…。」
「そうです。おかげで私、心臓の寿命が短くなってる気がします。」
「は?」
「ドキドキし通しってことです。もぅ、天真君またよけいなことを…。」
「いえ、天真は良い忠告を与えてくれました。これからは神子殿に愛想を尽かされぬよう、こうして苦手とはいえ言葉をもって神子殿にこの想いをお伝えしようと思っております。」
「愛想を尽かしたりしませんけど……あと……私も大好きですから。」
「は……。」
「頼久さんがちゃんと伝えてくれてるんですから、私もちゃんとしないと…。」
真っ赤な顔でうつむくあかねに、頼久の顔はこれがあの頼久かと彼を知る武士団の武士ならみんな目を丸くするだろう幸せそうな笑みを浮かべた。
そしてその腕は自然とあかねの方へ伸びていき…
小さなあかねの体を優しく抱きしめた。
管理人のひとりごと
久々に恥ずかしいことを真正面から真っ正直に言う頼久さんが見たかっただけです(’’)
管理人が何か書く時のモチベーションなんてそんなもんなんです(ノД`)
この場合、入れ知恵は天真君しかありえないと…
日本男児はこれが足りてないからね!
頼久さんは日本男児らしい日本男児で、武士ですが、ちゃんとやります!ってところをやってもらいました(w
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