
あかねは真っ赤な顔で縫物の最中だ。
何故顔が赤いのかといえば、それは今現在、あかねの体が頼久の膝の上にあるからだった。
どうしてこんな状態になっているかと言えば、それは本日が最近は忙しい頼久のたまの休みだからだった。
せっかくのお休みだから頼久さんの好きなように過ごしてくださいというあかねのお願いにこたえた結果がこの状況というわけだった。
「あの、頼久さん。」
「はい。」
「重くないですか?」
「いえ、一向に。」
背後から聞こえる問いへの答えは幸せに満ちた響きを帯びていて、あかねはもう何も言えなくなってしまう。
だから、せめて意識を他へ向けようとあかねは視線を御簾の向こうへと巡らせた。
そこにはすっかり雪が融け、緑に色付き始めた庭が広がっている。
「もうすぐ春ですね。」
「はい。」
「桜、楽しみですね。」
「はぁ……。」
珍しく歯切れの悪い返事に、あかねは思わず振り返った。
確かこの人は、満開の桜が好きではなかったか?
疑問を含んだあかねの視線に頼久は難しそうな顔で口を開いた。
「温かくなりますと、こうして神子殿をお抱きすることができなくなりますので…。」
「え………べ、別に夏でもしてくれていいですけど……。」
一瞬考え込んであかねがそう言えば、頼久は満面の笑みを浮かべて「御意」とだけ答えた。
こうなるともうあかねは頼久の顔を見ていられなくて、再び頼久に背を向けると縫物を再開した。
縫っているのは頼久の着物だ。
もうすぐ春。
京で迎える春は何度目になるだろう。
あかねはその数を数えようとしてふと背後のぬくもりへと意識が戻った。
そういえば、自分を抱いているこの人は、昔からこんなだっただろうか?
違ったような気がする。
昔はもっと従者という姿勢をなかなか崩してくれない人だった。
つまり、頼久がこんなふうに自分のしたいことを口にしてくれるようになるくらい長い時を共に過ごしてきたということだ。
あかねは季節と共に幸せに変化していく自分の生活を思って笑みをこぼした。
管理人のひとりごと
まぁ、頼久さんが休みにしたいことなんてね「神子殿と一緒にいること」ですよ(’’)
多少成長するとね、「神子殿といちゃいちゃすること」ですよ(’’)
他にしたいことなんてありませんよってお話です。
と書きながら、うちのサイトも何度目の春を迎えるんだろう?と疑問に思い…
数えるのが面倒になってやめました(’’)
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