
「お前はいいよなぁ。」
相も変わらず頼久の家のリビングで天真はビールの缶を片手に友人を眺めていた。
見れば見るほど悔しいほどのいい男で、天真は見ているだけで嫌になることがある。
しかもかなりな朴念仁ということの他はさして欠点もないときているのだ。
朴念仁というのだって女性相手に限ってのことで、更に言うなら彼の本命であるあかねに関してはかなり配慮が行き届く。
つまり、あかねにとっては欠点が皆無の男、それが源頼久。
と、天真の目には映っているわけだ。
「何がいいのだ?」
その頼久が剣呑な声を出しながら天真をじろりと睨み付けるのは、次に天真の口から出てくる言葉がろくなものではないと予想できているから。
何しろ、背中を合わせて共に互いの命を守り合ってきた仲だ。
「お前は着物の着方とか知ってるわけだろう?つまり、後の心配しないで脱がせられるってことだもんなぁ。」
「………つまり、何が言いたい?」
「あかねが着物着て初詣とか一緒に行ってもその後脱がせるのに躊躇しないですむ……。」
「そんなことをするわけがないだろう。だいたい、いくら京で育ったとはいえ、女性の着物の着せ方など知らん。」
「そうなのか?」
「当然だ。私には姉妹もいなかったのだぞ。そんなこと知っているわけがないだろう。だいたい、こちらの着物は構造が違っているようだ。」
「そんなもんか。」
天真は不機嫌そうな友の顔を見ながらビールを一口飲んで、それからあかねの笑顔を思い出した。
正月のあかねの晴れ着はかなり綺麗だった。
あれが婚約者で、一緒に過ごしていて、脱がせないという選択の友には感心させられる。
「ほんと、あかねが俺じゃなくてお前を選ぶ理由が時間がたつにつれてわかる気がするわ、俺。」
「ん?なんだ突然。」
「お前はいい男だって話。」
「…………気持ちが悪いぞ。」
「…………そうだな。」
自分の発言を思い起こして天真は苦笑を浮かべた。
確かに今のは気持ちが悪かった気がする。
「気持ち悪いついでに言っておくが…。」
「ん?」
「お前も良い男だぞ。」
思いがけないその一言に一瞬面食らって、そして天真はテーブルの上にあったつまみのピーナツを頼久に一粒投げつけた。
当然のようにそれを憮然とした表情で頼久がパシッとキャッチする。
相変わらずの反射神経に天真は満足そうに微笑んでビールを一口飲み込んだ。
「気持ち悪りぃ。」
天真のつぶやきと共に二人の男は満足げな笑みを交わした。
管理人のひとりごと
今回はなんというか、男の友情(笑)
着物ってねぇ、着付けするの大変でね。
男が脱がした場合、責任とって着せるところまでやるべきだと思うわけです(マテ
頼久さんは着物を着てた人だからできそうな気がしないこともないですが…
あの頃の着物って構造が全然違うのよね(’’)っていう話。
もちろん、頼久さんは強引に脱がせたりはしませんけどね!
紳士というか……従者だから(’’)
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