
もうすぐ夏休みというある週末。
森村家には天真、蘭、詩紋、あかね、頼久の五人が集まっていた。
というのも詩紋が新作のケーキを作って一同にご馳走するという企画が実現したのだ。
テーブルの上にあるのはおいしそうなチョコケーキだ。
あまり甘いものが得意ではない頼久も食べられるようにとビターなチョコケーキに仕上げてあるらしい。
詩紋がケーキを切り分け、あかねが紅茶をいれて準備が整うと五人は一斉にケーキを口に運んだ。
「おいしい、さすが詩紋君。」
「おいしいねぇ、あかねちゃんがこの前作ったクッキーもよかったけど、やっぱりケーキもいい!」
「中に入ってるこれ、なんだ?」
「オレンジピールだよ。チョコとオレンジって相性がいいんだ。頼久さん、食べられそうですか?」
「うむ。これなら食べられる。甘すぎず、いい味だ。」
五人口々にそう感想を言い合って、あかねが入れたダージリンの香りを楽しむとほぼ五人同時にほっと一息ついた。
暑さはだんだん夏のものになりつつあって、開け放たれた窓からは心地いい風が時折吹き込んでくる。
「もうすぐ夏休みだなぁ。頼久、お前らなんか予定とかたててんのか?」
「今のところはまだないが…。」
ちょっとからかってやろうという雰囲気で質問した天真に生真面目に答えた頼久はその視線をあかねに向けた。
「そうだ!頼久さん、あの話、京都にしませんか?やっぱり。この前、京都に取材に行きたい場所があるって言ってたじゃないですか?」
「それはまぁ、そうですが…よろしいのですか?神子殿は京都で。」
「私も行きたいなぁって。」
「では、そう致しましょう。」
にっこり微笑み合う恋人同士。
そんな二人をあんぐりと口を開けて見つめる残る三人。
「よ、頼久、お前……。」
「なんだ?」
「頼久さんが婚前旅行OKな人だとは思わなかった…。」
「うん、ボクもちょっと意外…。」
『婚前旅行?!』
三人の発言にハモって驚いたのは頼久とあかねだ。
そして三人はどうして頼久とあかねが驚いているのかがわからずにこちらも目を丸くする。
「お前ら、夏休みに二人で京都へ旅行、だろ?」
「…天真……これでも私はこの世界の常識くらい持っているのだが?」
「おう、だからお前が婚前旅行に行くってのが意外だって言ってんだ。」
「ちょ、天真君!婚前旅行って!違うからっ!」
顔を真っ赤にするあかねとは逆に頼久の眉間にはシワが寄っている。
「違うって、二人で京都に泊りがけ、婚前旅行の婚前交渉じゃない。」
「ら、蘭!違うの!うちの両親と一緒に四人で行くの!」
『な〜んだ。』
真っ赤になって叫ぶあかねの言葉に天真、蘭、詩紋の三人は声をそろえた。
そして…
「天真、表へ出ろ。」
静かに怒りを内にためていたらしい頼久の手によって天真は庭へと連れて行かれ、それからしばらくバシバシと不穏な音が庭から聞こえ続けたのだった。
管理人のひとりごと
頼久さんはね、けじめはちゃんとします、たぶん(笑)
京、つまり平安時代と現代とでは男女交際の常識もかなり違っていますが、頼久さんの生真面目さは一緒ですしね。
ということで旅行はみんなで行くのです(^^)
そのうち、天真や蘭や詩紋とも旅行行く話しが書きたいなぁ♪
プラウザを閉じてお戻りください