いつも必ず
 頼久は人ごみの中を歩いていた。

 周囲から感じる視線はいつものことだ。

 真の友、天真に言わせれば頼久は目立つ外見をしているということだったから、頼久も視線が自分に集中することは気にしないことにした。

 なんと言ってもこの世界は自分に注がれる視線を気にして警戒しなければならないほど物騒ではないのだ。

 京では武士という身であれば当然のことながらしょっちゅう感じていた殺気もこの世界で感じることはない。

 だから、頼久はたった一つのこと、待ち合わせをしている恋人を人混みの中から見つけ出すという仕事に集中していた。

 大学での講義が終わった後、あかねは大学でできた友人と二人で人気のケーキを食べに行っていた。

 もちろん、頼久はそれに同行しても何ら問題はなかったのだが、あかねの方が女二人の間に置かれても居心地が悪いだろうと気を使った結果、二人は珍しく外で待ち合わせることになった。

 待ち合わせの場所は人通りが多い公園で、他にも待ち合わせをしている人の姿もある。

 そんな中で頼久はすぐにあかねを見つけ出した。

 まだ小さく見えているあかねは、カバンを抱きしめて辺りをキョロキョロと見渡している。

 頼久の姿を探していることは間違いない。

 そのことに気付いて頼久は笑みを浮かべながら歩みを速めた。

「あかね。」

 少し距離のあるうちに声をかければ、あかねがハッと頼久を見て微笑を浮かべるとすぐに愛らしく駆けて来た。

「お待たせしてしまいましたか。」

「違うんです。予定より友達が早く帰っちゃったんで…その…気を使ってくれたみたいで…。」

 頬を赤く染めてもごもごと離すあかねに微笑んで見せて、頼久は左腕をあかねの方へ差し出した。

 そうすると自然とあかねがその腕をとって、二人は足並みをそろえて歩き出した。

 今日はこれからあかねの買い物に頼久が荷物持ちとしてお供する予定だ。

 だから二人はショッピングモールへ向けて歩きながら、互いに微笑を交わしていた。

「そういえばいっつも頼久さんが先に私のこと見つけますよね、待ち合わせすると。」

「そうでしたか?」

「はい。今だって私一生懸命探してたんですけどやっぱり頼久さんが先だったし…。」

 どうやら本当に一生懸命探していたらしいあかねは頼久を先に見つけることができなくて少々不満らしい。

 自分の腕を抱いてがっかりするあかねが愛らしくて、頼久の口元は緩みっぱなしだ。

「私は人とは多少違いますので、そのせいかと。」

「あ、そっか。頼久さんって勘が鋭くないと危ないお仕事してましたもんね。」

 どうやら機嫌を直したあかねはあっという間に笑顔を取り戻した。

 相変わらずころころと良く変わる魅力的な表情を間近で見ることのできる幸せを噛み締めながら、頼久は少しだけ歩みを速めた。

「頼久さん?」

「本日はいくらでも荷物を持たせて頂きますので、あかねは思う存分買い物を楽しんでください。」

 だから急いで目的地へ。

 そう言われたのだと気付いてあかねは「はい」と答えてうなずいた。

 人ごみの中を微笑みながら歩く二人は、もうどこから見ても普通の恋人同士に違いなかった。






管理人のひとりごと

外見とか雰囲気は現代人になった頼久さん。
でも、その鋭敏な感覚だけはまだ残ってるんですっていうお話。
あかねちゃんも頑張りましたが、勝てませんでした(笑)
生まれてすぐから磨かれた感覚ってそう簡単には鈍らないと思うんですよね。
頼久さんは特に(’’)








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