
珍しく頼久は屋敷で文書に目を通していた。
何故なら本日の急ぎの仕事はこれだけだからだ。
ならば、武士溜まりまで出向かずに屋敷で全てを片づけてしまった方がいいに決まっている。
そうすれば仕事さえ終わってしまえば愛しい妻とゆっくり共に過ごせるからだ。
だから頼久は妻と二人で過ごす時間欲しさに黙々と文書を片づけていた。
そこへひょっこり姿を現したのは頼久の求めてやまない人、あかねだった。
「神子殿、何か御用でしょうか?」
あかねが声をかけようかどうしようか迷っているうちに頼久が文書から目を上げた。
優しさにあふれた視線の先には恥ずかしそうに頼久の方へ歩いてくるあかねの姿がある。
「別に用があるわけじゃないんですけど…あの…ここにいちゃダメですか?邪魔にならないようにおとなしくしてますから。」
「それは別にかまいませんが、退屈ではございませんか?」
「た、退屈なんてことありません!その…側にいたいんです…。」
赤い顔でうつむくあかねに頼久は笑顔を見せた。
側にいたい、それは頼久も同じこと。
ただ側にいるだけで、いや、側にいたいと望んでもらえるだけで頼久にと手は幸せだ。
「では、なるべく早く終わらせますので、お好みの場所でおくつろぎください。」
「はい、有難うございます。」
元気のいい声でそう言って、あかねは頼久の背後に座った。
そんなあかねの気配を確認して、頼久は文書に目を通す作業を再開した。
何も言わず、黙々と仕事を続ける広い背中。
怨霊と闘っていた頃は何度もあかねを守ってくれた背中でもある。
真暗な京の夜、警護をしてくれていたこの背中に何度安心させてもらったことだろう。
あかねがそんなことを思いながら頼もしい背中をじっと見つめているうちに、頼久が文書を片づけ始めた。
どうやら仕事が終わったらしいと気付いたあかねが広い背中に寄り添うと、頼久がはっと視線を上げた。
「神子殿?」
「頼久さんの背中って広くて頼りになって…こうしてるととっても安心します。」
うっとりしたあかねの声が背後から聞こえてきて…
背には愛しい人の温もりを感じて、頼久は目を細めた。
「本日はよく陽も射しておりますし、しばしこのまま、ここで過ごしましょうか?」
「こうしてるの、頼久さんは嫌じゃないですか?」
「いえ、私も神子殿のぬくもりを感じさせて頂ければ心安らぎます。」
「じゃあ、もうちょっとだけ。」
「御意。」
文書を脇へと退けて、頼久は庭へ目を移した。
目の前には緑の美しい庭。
背には愛しい人の大切なぬくもり。
これ以上はないというほどの安らぎと幸せを頼久はゆっくりかみしめた。
管理人のひとりごと
頼久さんの背中いいなぁという管理人の妄想の現れ(’’)
何気ない日常ではありますが、お互いの存在が安らぎになるといいよねって感じ?
っていうか、あかねちゃんと過ごすためなら自宅で仕事をする頼久さんの話?
頼久さんならやりかねないと思う(’’)
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