天真は夜道をバイクで走り、一軒の家の前で止まった。
表札には源頼久とある家の前にバイクを置いて、天真は持ってきた荷物を手に呼び鈴を鳴らした。
今時珍しいほどの古めかしい日本家屋にふさわしい鈴の音が響いて、それからしばらく天真は玄関の前に立ち続けた。
いつもならすぐ家主が出てくるのにと小首をかしげていると、目の前の扉がゆっくりと開いた。
「お前なぁ…。」
天真は現れた頼久の顔があまりにも不機嫌そうに見えたので、思わずそうつぶやいてしまった。
「入るぞ。」
心の底から迷惑そうな顔をしている頼久の横を抜けて天真は勝手に中に入った。
無愛想なのはいつものことだが、これほどまでにあからさまに嫌な顔をされたことはなかった気がする。
などと考えながら天真はリビングへ足を踏み入れてそこで友が不機嫌だった理由に行きついた。
静かなリビングのソファの上におだやかな顔で眠っているあかねの姿があったのだ。
つまり、大切な神子殿の眠りを妨げる輩がやってきたので不機嫌だったというわけだ。
「何の用だ?」
殺気さえ感じそうな低い声に苦笑して、天真は頼久に持参した荷物を差し出した。
「何って酒飲みに来たに決まってんだろ。」
「天真、今宵は…。」
「わーってるって。もう少しあかね寝かせて、起きたら家まで送るんだろ?俺は今日のところは帰る。そいつは冷蔵庫にでも入れといてくれ。」
天真はもう一度だけ横目で眠っているあかねを見た。
目を閉じて寝息をたてているあかねは穏やかで、幸せそうだ。
「天真…。」
「気にすんな。お前の神子殿バカには慣れてる。」
急に申し訳なさそうになった声にそう答えて、天真はリビングを出た。
見送る頼久に軽く手を振って外へ出ると、涼しい風が天真の頬を撫でた。
京では色々あったし、あかねが頼久を選んだ時は複雑な想いもあった。
けれど、今、こうして二人を見ていると、これでよかったと心から思えた。
そんな自分に少しだけ胸を張って、天真はバイクにまたがった。
夜道へ走り出す天真を満月だけが見守っていた。
管理人のひとりごと
頼あかっていうよりはなんか天真君の話みたくなった(’’)
ちょっとバイクに乗る天真君を書きたかっただけなんですが…
あかねちゃんがいる時は立ち入り禁止の源家。
そんな話、な、はず(’’)