
「頼久さん。」
「はい、何か?」
頼久は耳に優しい恋人の声に微笑を浮かべて振り向いた。
そこにはカメラを手にはにかんでいるあかねが立っていた。
実は今日、頼久は袴を身に着けている。
何故かと言えば頼久が顧問をしていた高校の剣道部で記念撮影を行ったからだ。
剣道部は春から新しく顧問を迎えることになったため、頼久はめでたくお役御免となり、部員達がそれならば記念に集合写真を撮りたいと言い出した。
剣道部なのだからやはり袴姿で撮るべきだろうということになって、頼久も袴着用で写真に納まったところだった。
「あの…着替える前に私も一枚、撮らせてもらってもいいですか?」
「神子殿も、ですか…。」
「はい、あの…その…やっぱり袴の立ち姿がよく似合ってるというか、京にいた頃みたいな感じがするというか…。」
「お望みでしたら日頃から…。」
「そういうことじゃないんです!いつもしててほしいっていうわけじゃなくて…写真を部屋に飾ったりとかしたいなと思っただけで…。」
赤い顔であかねにこう言われてはもう頼久に断るという選択肢はない。
何しろ頼久は書斎にあかねの写真をこれでもかというほど飾っているのだ。
その写真の中には文化祭の時に仮装していたものまである。
頼久はその顔に微笑を浮かべてうなずいた。
「どうぞ、お気の済むように。」
「有難うございます!」
許可をもらってあかねは何枚か頼久の姿をカメラに納めた。
頼久はただ立っているだけだったから真剣にシャッターを切るあかねをじっと黙って見つめている。
何事にも真剣になるあかねの姿はとても愛らしい。
「頼久さん?」
「は?」
「有難うございましたって言ったんですけど、今…。」
「申し訳ありません。考え事をしておりました。」
あなたに見惚れていたなんて口に出せば、あかねはきっと恥ずかしがって拗ねてしまうから…
頼久はあかねの手を取って歩き出した。
「頼久さん?」
「神子殿が気に入ってくださったようですので、今日一日はこのまま過ごそうかと思います。」
「そんな…。」
「そうさせてください。」
頼久は挨拶してくる部員たちに挨拶を返すと、そのままあかねを連れて外へ出た。
辺りに人の気配はない。
頼久は恥ずかしそうで、それでも少しばかり嬉しそうにも見えるあかねと車をとめてある駐車場へ向かって歩き出すのだった。
管理人のひとりごと
この二人、夫婦になったらコスプレ合戦になりそうだ(’’)
まぁ、頼久さんは髪を結い上げて大小を差してって人でしたからねぇ、そりゃ袴も似合います。
本当は頼久さんに刀も差させてあげたかった(^^;
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