まっすぐ
 あかねはさっきから顔を真っ赤にしてうつむいている。

 それというのも朝餉を済ませてすぐに頼久に膝の上に抱き上げられたきり離してもらえないからだ。

 何を思ったのか頼久はあかねを腕の中に閉じ込めてニコニコとしているばかりで、何をする気配もない。

「あの…頼久さん。」

「はい、なんでしょうか?」

「えと…何かあったんですか?」

「いえ、神子殿にお知らせするようなことは何もございません。」

 きっぱり。

 一瞬の迷いもない頼久の即答にあかねは何も言えなくなってしまう。

 上目遣いに頼久の顔を盗み見れば、今にも溶けてしまいそうな満面の笑みだ。

 どうやら何か悩んでいるとか苦しんでいるとかいうことはないらしいので、それは安心なのだが…

 なんの理由も見当たらないとなるとあかねにはこの状況から逃れる術がないということになってしまう。

 あかねは赤い顔のまま小さく溜め息をついた。

「神子殿?先ほどからいつもとは違うご様子、神子殿こそ何かおありでしたか?」

「何かって……朝からずっとこのままじゃないですか…。」

 赤い顔で恥ずかしそうにそう言うあかねを見て一瞬キョトンとした顔になった頼久は、次の瞬間、さっと顔色を青くしてあかねを抱く腕に力をこめた。

「もしや、神子殿はこうしているのがお嫌なのですか?」

「いやじゃないですけど…恥ずかしいというか…。」

「お嫌でないのなら、もう少しだけこのままでいて頂けませんか?」

「それはいいですけど…どうしたんですか?急に、本当に何もないですか?」

「はい、何があったというわけではないのです。ただ、神子殿がいとおしい、それだけです。」

「はい?」

 突然何を言い出すのかとあかねが視線を上げれば、頼久はニコニコと幸せそうに微笑んでいる。

「ただただ日々、神子殿をよりいとおしく思っていると、その想いをこのように。」

 そう言って頼久は更にぎゅっとあかねを抱きしめた。

「頼久さんが私を大事にしてくれてるのはじゅうぶんすぎるほど伝わってますよ?」

「それではたりぬほど。」

「たりないって…。」

「言葉では言い尽くせぬほどにお慕いしております。」

「よ、頼久さんはもう…そういう恥ずかしいことをまた…。」

「言葉は得手ではありませんので、どうか今しばらくこのままで。」

 耳元でそう囁かれて、首まで赤くなったあかねは何を思ったかすっと頼久の首に腕を回して抱きついた。

 これには頼久が目を丸くする。

「神子殿?」

「私だって頼久さんを好きな気持ちは負けないんですから。」

 耳元で聞こえたその言葉にこれ以上はないというほどの笑みを浮かべて、頼久は妻の小さな体を抱きしめ直した。

 昼の陽射しに照らされた縁で仲睦まじく抱き合う二人には、女房達もかける言葉がなかったらしく、二人はこの日一日を二人きりで穏やかに過ごすのだった。





管理人のひとりごと

とうとう言葉を使って伝えることをあきらめた頼久さんの図(マテ
二人ともどっちがより好きかを伝えようと必死♪
頼久さんもそこは譲らないでしょう(w
この二人の場合、夢中になると時と場所は忘れそうなので、女房さん達は気を利かせるのが大変そうです(’’)







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