
頼久は軽く食事をすませ、休息をとってからあかねの局の前に立った。
龍神の神子であるあかねの局の夜の警護は源頼久の役目と今では誰もが当然のように思っている。
だから陽が落ちるのと同時に姿を現した頼久に仲間の武士はあっさりとその任を譲った。
月が辺りをうっすらと照らしているから今夜の警護は月のない夜よりは容易だろうなどと一人で辺りを見回してから、頼久の視線は自分とあかねを隔てる半蔀へと向いた。
半蔀の向こうにはかすかだがあかねの気配を感じる。
兄を失った話をしてから頼久の中であかねは特別な存在だ。
何にも代え難い尊い人。
何を引き換えにしても守りたい人。
そして、今では誰にも渡したくない、一生あかねの側で生きていきたいとさえ思っている。
当然のように生まれたその想いに困惑しながらも、頼久はあかねを慕う自分をもうどうすることもできないのだと気付いていた。
だが、あかねを守るためだけにある自分が、そのような想いをあかねに向けてはいけないとも思っている。
二つの想いの間で頼久の顔が苦痛に歪んだその時、半蔀がゆっくり開いてひょっこりとあかねが姿を現した。
「あ、やっぱり頼久さん、いてくれましたね。」
「な、何か御用でしょうか?」
急に現われた愛らしい姿に少なからず動揺しながら頼久が尋ねれば、あかねはテレたように少しうつむいた。
「頼久さんとちょっとだけお話がしたいかな、なんて……迷惑ですか?」
「迷惑だなどということは決して……ですが、私などと話をなさっても神子殿のお気が晴れるとはとうてい……。」
もともと普通に雑談をすることさえ得手ではないという自覚のある頼久だ。
愛しい女性を前にしてまともに会話ができるとは思えない。
だが…
「晴れます!だって今日は一日会えなかったし…頼久さんの声、大好きだし…。」
『大好き』というその一言で頼久の胸は簡単に高鳴って…
あかねと二人、赤い顔でうつむいた。
「ダメ、ですか?」
「み、神子殿のお望みとあれば、お気の晴れる話ができるよう努力致します。」
好きだと言われたのは己自身のことではないと自分に言い聞かせて頼久が姿勢を正せば、あかねがくすっと笑みを漏らした。
「頼久さんってば、そんなにかたくならなくても大丈夫ですよ。」
楽しそうにそう言って微笑んでくれたあかねは、頼久のすぐ近くに腰を落ち着かせた。
それからしばらくの間、頼久は鈴の音のように愛らしいあかねの声に酔いしれた。
その声を聞いているだけで頼久の心は果てしなく温かくなるのだった。
管理人のひとりごと
この段階になると、両思いであることに気づいていないのは本人達だけってな状況です(爆)
少将様辺りはとっくの昔に気づいてて苦笑ばかりさせられてます(w
そのちょっと後に天真君とかも気づいて「ぐはぁぁぁ」と身悶えたりするわけです(w
ゲーム中のあかねちゃんと頼久さんは最後の最後までお互いの想いに気づかない天然くらいが素敵(’’)
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