
「頼久さん、何か欲しいものとかないですか?」
縁に座って庭を眺めていた頼久の耳に届いたのは愛しくも大切に思う女性の声だった。
声のした方を振り返ってみれば、今まさに愛しい妻が頼久の隣へ歩み寄ってくるところだ。
「いえ、今のところは別に。」
「何か飲みたいとかちょっとお腹がすいたとか、何かあったらすぐに言ってくださいね。」
そう言って微笑みながら隣に妻が座るのを見守りながら、頼久の顔には笑みが絶えない。
久々に三日ほど休みが与えられ、頼久は今、愛しい妻と共にその初日を過ごしている。
あかねはというと朝から奥で頼久が欲しがるかもしれない軽食の準備などを女房達に言いつけて、すっかり妻らしく立ち働いていた。
「頼久さんが三日もお休みだなんて久しぶりですから、ゆっくりお休みして下さいね。」
「はい。」
「あ、でも、頼久さんが何かお休みの間にしたいことがあるなら話してください。私に手伝えることがあれば何でもお手伝いしますから。」
「はい。」
隣に座って張り切るあかねに頼久は微笑を浮かべて見せた。
休みだからといってやりたいことなど頼久には一つしかない。
それはもちろん、妻である愛しい人、あかねと共に過ごすことだ。
もともと趣味だの娯楽だのにはなんの興味も持たない朴念仁の頼久だ。
あかねと共に過ごす意外にやりたいことなどあるわけがなかった。
「頼久さん?」
「はい。」
「なんか今日の頼久さん、変です。」
「そう、でしょうか…。」
突然のあかねの言葉に頼久は目をしばたかせた。
「そうですよ、さっきからなんだかただ笑って『はい』しか言わないし…。」
「それは……。」
頼久は小首をかしげて自分を見上げているあかねをじっと見つめて微笑んだ。
いつだって頼久の顔に笑みをもたらしてくれるものは一つだけだ。
「良いものだと思っていたのです。」
「はい?何がですか?」
「神子殿に呼んで頂くこの名がです。」
「はい?」
「神子殿のその美しいお声で呼んで頂くまで、己の名をこれほど良いものだと思ったことはありませんでした。」
「頼久さんはまたそういう恥ずかしいことを…。」
そういって顔を真っ赤にするあかねの腕を頼久が優しく引き寄せた。
すると自然とあかねの体は頼久の腕の中におさまって…
「頼久さん?」
「手伝って頂けるとのことでしたので。」
「へ?……まさか、これがお休みに頼久さんのしたいこと?」
「はい、しばしこのまま。」
そういってぎゅっと抱きしめられればあかねにはもう抗うことなんてできなくて…
頼久は休みの一時を妻のぬくもりと共に過ごすのだった。
管理人のひとりごと
現代ならね、デートとか映画鑑賞とかね、色々あると思うんですよ。
いくら頼久さんでも(爆)
でも京はね、まぁ、二人で馬乗ってどっか行くくらいしかすることないでしょう。
あかねちゃんは奥さんらしく屋敷にいたいのでこんな感じになりました。
頼久さんはたぶん、あかねちゃんがいるならどこだっていいから(’’)
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