
「ごめんなさい…。」
あかねは頼久の前で盛大にうなだれている。
というのも、今、目の前の夫から間違いなくお説教をされるという瞬間だからだ。
頼久はというと難しそうに眉間にシワを寄せ、胸の辺りで腕を組んでじっとあかねを見つめている。
帰ってきてすぐにあかねの元へやってきて、そして今の状況になだれ込んだ。
あかねはもう自分が悪いと悟っているので、夫の前に正座して神妙にうなだれているというわけだ。
「本当にごめんなさい。」
「神子殿、おでかけされるのがいけないと申し上げているわけではありません。」
「はい…。」
「万が一のことがあってからでは遅いのです。」
「はい、ごめんなさい…。」
「神子殿は左大臣様の娘とこの頼久の妻という二つのお立場をお持ちです。いつ何時、誰に狙われるかもしれない尊い御身でもあります。」
「はい…本当にごめんなさい、次から気をつけます…。」
あかねはそう言って小さな涙をこぼした。
「なっ…。」
一度流れてしまった涙は後から後から溢れてきて止まらない。
そしてそれを見て凍りついたのは頼久の方だ。
いまだに妻をまるで女神か何かのようにあがめている頼久は妻が涙を流すなどとても許せる事態ではない。
「ご、ごめんなさい…反省、してます……だから、ここに、いて下さい……。」
「は?」
「頼久さん、どこかへ行っちゃ、嫌です。」
そう言ってあかねは盛大に涙を流し始めた。
どうやら自分があかねの今回の行動にあきれて出て行くと思っているらしい。
そのことに気付いて、頼久は深い溜め息をついた。
「神子殿が心配なさっているようなことは決してありませんので、どうか涙をおさめて下さい。」
「頼久さん、私のこと、嫌いになってません?」
「なるはずがありません。私が申し上げたいのは、神子殿の御身に万が一のことがあった時にはこの頼久も生きてはいられませぬ故…。」
「そんな!」
「いえ、真実、神子殿の御身が害されるようなことがあれば私は生きてはいられません。ですから、どうかお出かけの際は供をお連れ下さいと、そう申し上げたいのです。」
「頼久さん……。」
困ったような顔で優しく言う頼久に、あかねは涙を流しながら抱きついた。
頼久は小さな体を膝の上に乗せて、大切そうにあかねを抱きしめる。
「お分かり頂けたのならいいのです。今回は私も気遣いが至りませんでした。藤姫様に何か異変があった時には、次から必ずこの頼久が神子殿をお迎えにあがります。」
「はい、ちゃんとおとなしく頼久さんを待ってます。」
そう言ってあかねは頼久の肩に頬をすり寄せた。
そうすると頼久も愛しそうに抱きしめる腕に力をこめてくれる。
どんなに厳しい言葉でも、それは必ず自分のために紡がれるもの。
そうと悟ってあかねは夫の腕の中で幸せを噛み締めるのだった。
管理人のひとりごと
頼久さんがもしあかねちゃんにお説教するようなことがあるとしたら…
答えは、やっぱり危険だとわかってるのにそれをやっちゃったときでしょう。
で、お説教って言うか懇願みたいになります(’’)(マテ
あなたが死んだら私も死にます、だから死なないで、みたいな(コラ
これ以外に頼久さんがお説教って…イメージがわかない管理人でした…
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