一人想う
 どうして急にあかねのことを思い出したのか、それは頼久自身にもわからなかった。

 いや、あかねのことは常に心のどこかで想ってはいるのだ。

 なのに、どうしてこんなタイミングであかねのことを恋しく思い出してしまったのか。

 頼久はベッドの上で小さな溜め息をついた。

 部屋の中を照らすのはベッドサイドにある小さなランプの明かり一つだけ。

 手元には読みかけの本。

 時計を見れば深夜の2時。

 寝る前に仕事に必要な資料に目を通していただけだったのに、ふとあかねのことを恋しく想ってしまった。

 愛しい人への想いは一度あふれ出すと限りが無くて、京にいた頃の思い出から最近の笑顔に至るまでが次々と頼久の脳裏をよぎった。

 京とは違ってこの世界はとても便利で、携帯を使えばすぐに声も聞けるしメールのやりとりもできるのだが、こんな真夜中では眠っているであろうあかねを起こしてしまう。

 頼久は読みかけの本を閉じてランプの横へ静かに置くと、深い溜め息をついた。

 あかねは今頃試験勉強を終えて眠っていることだろう。

 その寝顔はきっと愛らしいに違いない。

 京にいた頃、夜中にこの世界を恋しがって泣いていたあかねの顔が思い起こされた。

 あんなに泣くほど恋しかった世界に戻ってきたのだ、今はきっと心安らかに眠っていることだろう。

 今の自分が守る必要はどこにも無い。

 そう思うと不安さえ胸の内から沸いてきて…

 頼久は解き髪をかきあげると枕元においてある携帯を手にとって握り締めた。

 側にいてあかねを守らなくてもいい世界。

 この世界ではこの小さな機会一つが自分を愛しい人とつないでくれるもののように思える。

 それも今は使えない。

「神子殿…。」

 口に出して呼んでしまえば愛しさはつのるばかりで…

 頼久がこれはもう朝まで眠れそうにないと覚悟を決めたその時、携帯が鳴った。

 その着信メロディは間違いなくあかねからのメールが届いたことを知らせる音だ。

 頼久が慌てて携帯を開けば、そこにはあかねからのメールが間違いなく着信していた。

 メールには別に何か用事があったわけではなく、ただ頼久のことを思い始めたら恋しくなってどうしようもなくて時間が時間だとわかっているけれどメールを出してしまったと書かれている。

 それからはもうひたすらに深夜にメールなど出してしまったことへの謝罪がぎっしり。

 頼久はあまりの幸せに口元をほころばせると、メール画面を閉じてあかねの携帯の番号をプッシュした。

 深夜だろうが早朝だろうが、あかねが自分のことを恋しいといってくれる。

 それがどれほど自分にとって幸せなことか。

 そのことを今すぐに伝えなくては。

 声を声を聞いて聞かせて、想いを交わせばいい。

 この世界ではそれがかなうのだから。

『はい、頼久さん?起こしちゃってごめんなさい。』

 頼久は携帯を耳に当てて聞こえてきたその声に心の底から幸せを感じた。

 5分だけ。

 胸の内でそう決めて、頼久は謝り続けるあかねをなだめ始める。

 眠っている時でさえあなたを想い続けているのです。

 だから5分だけ、声を聞かせてください、と。





管理人のひとりごと

夜は急に人恋しくなることが…管理人はありませんが(’’)(マテ
頼久さんみたいに想い人と長いこと想い続けて離れているとあるんじゃないかなと…
そういう時はあかねちゃんも同じ想いだったのねっていうお話。
秋の夜長とかこういうふうにしっとり過ごすのいいよねぇ(’’)←憧れ
まぁ、管理人はたいてい読書して朝になる羽目に陥ります…








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