
『頼久は神子殿に本気だろう?』
帰り際、友雅にかけられた言葉が家路を急ぐ頼久の耳に甦っていた。
もちろん「無論です」と頼久は即答したのだが、帰ってきた友雅の言葉は…
『私もそろそろ本気になってみようかと思ってね。』
だったのだ。
あまりに突然のことで何に本気になろうというのか頼久が尋ねる前に友雅は立ち去ってしまった。
いったい友雅は何に対して本気になろうというのか。
頼久はそのことが気になって黙々と歩いていた。
友雅は八葉のつとめはさすがに真剣に取り組んでいたが、今はもうその八葉のつとめもなく、仕事も適当にこなしていると鷹通が言っていた。
仕事に本気になるというような人物でないことは間違いない。
とすると、友雅が本気になることというのは…
「あ、頼久さん、お帰りなさい。」
気付けば頼久は今となっては自分の屋敷といってもいいあかねの屋敷に到着していた。
縁から可愛らしく身を乗り出して微笑むあかねの姿を目にして幸せそうに微笑んだ頼久は、次の瞬間、目を大きく見開いて凍りついた。
もしかして、友雅が本気になると言ったのはこの龍神に愛でられし神子のことなのではないか?
あの友雅があかね以外の何かに本気になるなどということがそもそも想像できない。
そう気付いて頼久は急に駆け出すと、あかねの小さな体を抱きしめた。
「頼久さん?」
すぐにいつもと様子が違う頼久に気付いて、あかねは頼久の腕の中で視線を上げた。
するとそこには案の定、苦しそうに歪む頼久の顔が…
「神子殿…。」
「はい?何かあったんですか?」
「私は…私は無骨者ゆえ、神子殿のお気に召すように何一つできた試しはございませんが、誰よりも神子殿のことを深くお慕いしております。」
そう言う頼久にギュッと抱きしめられて、あかねは顔を真っ赤にした。
この夫が恥ずかしくも嬉しい言葉を贈ってくれるのはいつものことなのだが、何度聞いてもどうしても照れてしまう。
「ですからどうか、お見捨てにならず…。」
かすれた頼久の声を耳元に聞いて赤くなっていたあかねは、小さく溜め息をつくとその体を頼久から離した。
「頼久さんはまたそんなことを言って、何があったんですか?」
「さきほどおっしゃっていたのです、友雅殿が本気になってみようかと…。」
「友雅さんが?何にですか?」
「はっきりとは…ですが、おそらく神子殿に、ではないかと……。」
「それはないですよ。」
「そうでしょうか…。」
「それに、もし友雅さんが私に本気になったとしても、私は頼久さんだけが大好きなんですから心配しないで下さい。」
「神子殿…。」
あきれている様子のあかねの言葉に頼久が嬉しそうに微笑めば、あかねが何かに気付いたようにポンと手をたたいた。
「そっか、友雅さんやっと本気になるんだ。」
「は?」
「ああ、私のことじゃないですよ。」
「はぁ。」
あかねはそれ以上何も教えてはくれなかったが、頼久はすぐに妻を優しく抱きしめて笑みを浮かべた。
あかねが自分の腕の中で幸せそうにしてくれるのなら、今はただそれでいい頼久だった。
管理人のひとりごと
友雅さんが何に本気になったのかはあかねちゃんが喜んでるらしいところから察していただいて…(マテ
とりあえず頼久さんはあかねちゃんが自分の側で幸せそうにしててくれれば他のことはどうでもオールオッケーです(’’)
うちはやたらと友雅さんが頼久さんをからかいますが、まぁ、そういうキャラだろうな、少将様ってことです(コラ
でも、友雅さんがあかねちゃんに本気になったら頼久さんはどうやって戦うのかなぁ…
見てみたい管理人でした(’’)
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