
頼久は眉間にシワを寄せながら歩いている。
顎に手を当てて真剣に考え事をしながら歩いているのだ。
それというのも土御門邸を出る間際に、藤姫のもとを訪れていた友雅から気にかかる話を聞いたからだった。
『女人の幸せとは男には測り難いものだな。』
去り際、友雅は頼久にそう言ったのだ。
苦笑しながら言った友雅の言葉が気になって、頼久はいつもなら浮かれているはずの帰り道を苦しげな顔で考え事をしながら歩くことになってしまった。
考えているのはただ一つ。
愛しい妻は果たして今、幸せなのだろうか?ということ。
心優しい妻はいつも陽の光のように温かい笑顔を自分に向けてくれる。
その笑顔を見るだけで、自分はこの世の誰よりも幸せになることができるのだが、さて、妻は幸せかと考えてみると全くわからない。
心優しい妻だから、自分が幸福ではなくとも微笑んで見せてくれているのかもしれない。
そう思い始めると心配になって、頼久は妻の屋敷へ駆け込んだ。
「あ、頼久さん、お帰りなさい。」
必死の形相であかねのいる局へ駆け込んだ頼久は、迎えてくれたあかねの笑顔を目にしてハッと目を見開いた。
すぐに立ち上がって頼久の方へ歩いてきたあかねは、その顔に心の底から嬉しそうな笑みを浮かべている。
「頼久さん?何かあったんですか?」
急に笑顔を曇らせたあかねを頼久はそっと抱き寄せて、ほっと安堵の溜め息をついた。
逆にあかねは何がなんだかわからずに懸命に視線を上げる。
すると上げた視線の先には幸せそうな笑みを浮かべている頼久の顔が…
「どうしたんですか?今日の頼久さん、なんだか変です。」
「申し訳ありません。御心配をおかけしました。実は友雅殿に女人の幸せというものは男には測り難いものと言われまして…。」
「友雅さんが?」
「はい。友雅殿のおっしゃる通りと思っていたのですが…。」
「また頼久さんは私が幸せじゃないんじゃないか?とか考えたんですね?」
あかねは一転して怒ったような顔で頼久を見上げた。
「ご明察です。」
「もぅ、頼久さんはすぐそんなこと考えるんですから!私は毎日、すーっごく幸せです!」
「はい。」
「へ?」
言葉を尽くして説明しなくてはならないかと覚悟していたあかねは、頼久があまりにあっさり納得したので拍子抜けしてしまった。
「えっと…。」
「今、神子殿がとても幸せそうな笑顔をお見せ下さいましたので。」
「頼久さん…。」
二人はふわりと微笑み合って、どちらからともなく抱き合った。
言葉はなくてもこうしてぬくもりで伝え合えば、お互いに幸せだとすぐわかる。
だから、二人はそのまましばらく、言葉もなく抱き合っていた。
管理人のひとりごと
あかねちゃんの幸せだけを考えている頼久さんの図(’’)
まぁ、そりゃいつものことなんですが…
相手が幸せでいてくれるか、これはなかなか難しい問題だと思います。
頼久さんなら間違いなく、あかねちゃんの幸せばーっかり考えるんだろうなぁと。
あかねちゃんも同じなので結局二人とも幸せなのです!
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