ライバル
 頼久は庭で木刀を振っていた。

 もう小一時間もそうしている。

 朝の鍛錬とはまた別だ。

 現在の時刻は午後5時。

 もうすぐ陽が暮れてすっかり暗くなるというのに頼久は額に汗が浮くほど木刀を振り続けていた。

「お前は、なんでこっちきてまでそんなに鍛錬してんだ。」

 そう声をかけられても頼久は木刀を振る手を休めない。

 玄関から中へ入らずに庭へ回ってきたのが真の友、天真だとわかっているからだ。

「お前がそうも必死に鍛錬してると、なんでか不安になるんだが…何する気だよ。」

 そう問われて頼久は初めて木刀を振る手を止めた。

 振り返ればあきれたような顔の天真がビール缶を手に立っている。

「何と問われれば、『花断ち』だ。」

「あ?」

「神子殿が見てみたいとおっしゃっていたのだ。」

「何を。」

「『花断ち』をだ。」

「だから、なんだよ、それは。」

「剣の技の一つらしい、こう、桜の花弁を空中にて太刀で両断するという…。」

「……無理だろ…。」

「神子殿が御覧になりたいと仰せだったのだ。」

「ちょっと待て、なんであかねが剣の技なんか知ってんだよ。」

「神子殿は最近ゲームを始められたのだ。その中に出てくるキャラクターの一人にいたく御執心で『花断ち』はそのキャラクターが使うらしい。」

「……ゲームってお前……んなもん現実にできるわけねーだろ……っていうか、ゲームのキャラにライバル心燃やしてどうするよ…。」

「いや、神子殿が御覧になりたいとおおせならば…。」

「……鍛錬するのは勝手だから止めねーけどよ…
無理だと思うぞ、俺は……。」

「いや、きっと修得して見せる!」

 断言して頼久は再び木刀を振り始める。

 その顔はいたって真剣だ。

 天真は修得したところでその技を見せるための太刀はどこから調達すんだよと心の中でつぶやきながら縁側に座った。

 そして必死に木刀を振る友の背中を見つめながら、これはもうあかねに止めてもらうしかないだろうと溜め息をつくのだった。





管理人のひとりごと

頼久さんならやるね、花断ち、と思いまして(’’)
あかねちゃんのためならきっと修得するね!(マテ
まぁ、同じ武士つながりということで…
それにしても現代舞台だと天真君がやたら冷静です(’’)







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