両思い
 あかねは頼久を送り出してからずっと黙々と裁縫をしている。

 ここ数日寒い日が続いて、屋敷にこもっている自分はともかく外で仕事をしている夫はどれほど寒いだろうとあかねは心配でならなかった。

 でも、自分ができることなんて高が知れていて…

 一生懸命考えて思いついたのが冬でも寒くないように暖かい着物を縫ってあげること、だった。

 もちろん、縫い物なんてほとんどしたことがなくて、ちゃんと作れるかどうかわからないから着物を縫っていることは大切な旦那様には内緒。

 ちゃんとできたら渡そうと今、最後の追い込み中だった。

 女房達に教えてもらってなんとか今日中にちゃんとした着物に仕上がってくれそうなところまできて、あかねがにっこり微笑んだその時、急に縁の方が騒がしくなった。

 あかねが何事かと確かめる間もなく、御簾が跳ね上げられてすたすたと頼久が入ってきた。

 秘密のはずの縫いかけの着物を隠すのも忘れてあかねがキョトンとしていると、頼久はすっとあかねの背後に座り、あかねの体を軽々と自分の膝の上に抱き上げて腕の中に閉じ込めてしまった。

「よ、頼久さん?」

 今日は朝から仕事で日が落ちるまで戻ってくるはずのない夫の異常な様子にあかねは慌てた。

 これはもしや、何かよくないことが起こったのでは…

「頼久さん、何かあったんですか?」

「いえ…その…神子殿が寒い思いをしておいでではなかろうかと…。」

「はい?」

「友雅殿に、さきほどこうして温めるのが一番と教わりましたので。」

「と、友雅さん…。」

「神子殿には何一つ不自由なくお暮らし頂きたく…。」

 そう言って微笑む夫の顔を見上げてしまってはもうあかねには友雅に小言を言う気もなくなって…

「神子殿、何か作っておいでだったのですか?もしや私はお邪魔を…。」

「あ、いえ、もうすぐできるから大丈夫ですよ。頼久さんにプレゼントしようと思って作ってたものだし。」

「ぷれ…?」

「ああ、贈り物ってことです。最近凄く寒いから、頼久さんにこれを着て暖かくしてお仕事してもらおうと思って。もうちょっとでできるんですけど、着てもらえますか?」

「もちろんです!神子殿に縫って頂いた着物を着させて頂けるなど、この身はなんと幸福なことか…。」

「お、大げさですってば…。」

 赤くなってうつむくあかねをぎゅっと抱きしめて頼久は幸せそうだ。

「よ、頼久さん。」

「はい。」

「ちょ、ちょっと緩めてください、腕。お裁縫の続きができません…。」

「緩めればこのままでいてもよろしいですか?」

「そ、それは…はい……。」

 妻の許可を得て嬉しそうに腕をゆるめる頼久。

「寒くはありませんか?」

「…すごくあったかいです…。」

 赤い顔をしてそう答えて、あかねは縫い物を再開する。

 その様子を頼久は満足そうな笑顔で見守っていた。





管理人のひとりごと

たぶん、以前にあったSSの何かとつながってる(’’)(マテ
少将様にたきつけられるのはいつものことですね(w
まぁ、つまりはいちゃいちゃしてる二人を書いてるだけ、ってのもいつものことですね(’’)(コラ






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