寒波
 雪が深々と降っている。

 最近寒い日が続いたと思ってはいたが…

 と頼久は武士団の棟にある自室で外を眺めていた。

 頼久の妻である龍神の神子はこのような寒さとは無縁らしい世界からやってきた天女だ。

 さぞ不自由をかけているだろうと思うと頼久の胸の内は激しく痛んだ。

 新しく衣をしつらえて火桶なども用意したがまだたりぬ気がする。

 何しろ彼女のもといた世界では自分のいる局全体が春のように暖かいというのだから。

 異世界から舞い降りたもうた天女に自分ごときがどれほどのことをして差し上げられるかと頼久が眉間にシワを寄せて考え始めたその時、一人の客が頼久の前へと姿を現した。

「また難しい顔をしているな、頼久は。藤姫の顔を見に来たついでに寄ってみたのだが…何をそんなに真剣に悩んでいるんだい?」

 現れたのは友雅だ。

 いつものように優雅な身のこなしでやってきたその人に、頼久は深々と一礼してから口を開いた。

「神子殿にこの冬の寒さで御不自由をおかけしていますので…。」

「ふむ、それは不自由させているだろうな、頼久がこんなところにいるようでは。」

「は?」

 目の前に座って笑みを浮かべている友雅の言いたいことが頼久にはわからない。

 キョトンとしている元は八葉の仲間に友雅はあきれたと言いたげな苦笑を浮かべて見せた。

「女人を冬の寒さから守る一番の方法はなんだと思うね?頼久は。」

「…それがわかれば悩んでおりません。」

「簡単なことだ。女人を冬の寒さから守るには恋人がその腕にしっかりと抱きとって、その身で温めてやるのが一番。ましてや頼久と神子殿は夫婦なのだから…。」

「失礼致します。」

 友雅の言葉が終わらぬうちに頼久はすっくと立ち上がると、足早に去っていってしまった。

 残された友雅はというと、その口元に苦笑を浮かべて立ち上がった。

「あれでは神子殿も苦労が絶えぬな。」

「橘の少将様…あの、若棟梁は…。」

 友雅が立ち去ろうとしたその時、武士団の若い武士が一人姿を現した。

 歩みを止めた友雅はクスリと男でさえうっとりするような微笑を浮かべると、手にしていた扇をヒラヒラと振って見せた。

「若棟梁は急用で自宅へ帰ったよ。急ぎの用でないなら放っておいてやりなさい。」

 それだけ言うと友雅は再び歩き出した。

 キョトンとしている若い武士は何かに気付いたらしく苦笑すると、黙って友雅に一礼した。

「武士団の武士も苦労が絶えぬな。」

 その友雅の言葉が若い武士に聞こえたかどうか。

 源武士団の若棟梁初めての恋はどうやら多くの理解者に優しく見守られているらしかった。






管理人のひとりごと

相変わらず少将様が頼久さんをからかって遊んでますな(’’)
寒い季節は人肌が一番って話です(w
頼久さんはそれまでそういうのって体験したことがなかっただろうから、この冬はとっても暖かいでしょうなぁ(^−^)
つまり、暖かいのはあかねちゃんじゃなくて頼久さんってことだな(’’)






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