
「もしも、の話ね。」
ある日の昼休み、蘭のその一言から話は始まった。
いつものように屋上で一緒にお弁当を広げていたあかねと天真が何事かと蘭に目を向ける。
あかねはおかずの玉子焼きを箸でつまみあげた状態で、そして天真は購買で買ったカツサンドをくわえたまま。
「もしも、今すぐお兄ちゃんがあかねちゃんに人口呼吸しないと死んじゃうとする。」
「へ?」
「あん?」
「だ〜か〜ら〜、もしも、の話。で、お兄ちゃんはもちろんあかねちゃんを助けるために人口呼吸をしてあげる。」
「まぁ、するだろうな。」
何のための仮定で何の話なのかわからぬまま、とりあえずうなずく天真。
「それであかねちゃんは助かるわけ。」
「なんのためのたとえ話なの?」
「問題はここから。あかねちゃんは無事に助かったんだけど、お兄ちゃんに人口呼吸された結果なわけ、で、それが頼久さんに知られた場合、お兄ちゃんはどうなるでしょうか?これが問題。」
「お前なぁ…。」
「別にどうにもならないと思うけど…頼久さんなら感謝するんじゃないかなぁ。」
『甘いっ!』
思いがけず二人に同時に言われてあかねが目を丸くした。
「頼久さんが黙ってお兄ちゃんに感謝するわけがない!」
「どうして?」
「どうしてってお前…。」
天真と蘭が顔を見合わせて溜め息をついた。
あかねはのほほんとした顔で二人に小首を傾げている。
「頼久さんならお兄ちゃんがあかねちゃんの肩を抱いただけで猛稽古をつけてぼこぼこにするね、そして人口呼吸なんてした日には、絶対半殺しだね。」
「ないない、それはないよ。」
蘭の言葉に笑うあかね。
だが、そんなあかねの前で天真は深い溜め息をついた。
「半殺しはまぁな、ないかもな。」
「だよね。」
「お兄ちゃんも甘い!」
「半殺しにはされないだろうが……たぶん俺が見ててつらくなるだろうな…。」
『へ?』
今度は女性二人があわせて驚きの声をあげた。
まだ蘭が言っている反応の方がありそうな気がするからだ。
どうしてこの仮定で天真がつらくなるのか二人には全くわからない。
「あかねを助けた俺を半殺しってことはねぇだろうし、あいつのことだからまぁ礼の一つも言ってくるだろう。が、あいつのことだから口には出さなくても俺には嫉妬する、間違いなくする。で、俺はそれを口に出せないあいつをいたたまれない感じで見ることになる…絶対そうなるな…。」
「で、お兄ちゃんはもう俺を殴ってくれ〜とか叫ぶことになると、ありそうありそう。」
深く溜め息をつく天真と一人納得してうなずく蘭。
そしてあかねは…
「あ、あるかなぁ、そんなこと…。」
「絶対そうなるから、俺が人口呼吸しなきゃないような事態に陥るのは止めてくれ。」
「大丈夫!そうなったら私がしてあげる!」
胸を張ってそういう蘭に天真は再び深い溜め息をついた。
だったら最初から俺が人口呼吸をするって仮定をするな、と心の中でつぶやきながら。
管理人のひとりごと
他愛もない日常の戯れ(笑)
頼久さんはああ見えてけっこう嫉妬深いのではないかと思うのです。
自分が一途だしね(^^)
でも、ほら、武士とかやってたんで、それを表に出すのは苦手なんで、一人で苦悩しちゃう、みたいな(’’)
そしてそんな頼久さんを理解している真の友、でした(笑)
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