花の下で−京編−
 あかねは後ろから頼久に抱かれるようなかっこうで馬に乗っている。

 背には暖かくて頼りになる胸板が感じられて、あかねの顔には笑みが絶えない。

 怨霊退治のために京を走り回っていた時のように水干姿のあかねは、髪こそのびているものの当時と様子はさほど変わってはいなくて、頼久はそんなあかねを大事そうに見つめていた。

 馬の手綱をさばきながらあかねへの気遣いも行き届いているのは、頼久の腕もさることながらもう何度も二人でこうして馬に乗っているからでもある。

 今こうして共にいることが、共にい続けることができるそのことが頼久には幸福でならない。

「うわぁ、きれい、満開ですね。」

「はい、この辺りに馬をつないで少し歩きますか?」

「はい、そうしましょう。」

 二人がやってきたのは墨染だ。

 白い桜が咲き誇っているこの時期に二人で訪れたいとあかねが突然言い出したのを神子殿大事の頼久が快諾して今に至る。

 頼久はあかねを優しく馬から下ろすと、馬を近くの木につないだ。

「今年もここの桜は優しくてきれいですね。」

 頼久と二人、並んで歩きながらあかねは桜の美しさを堪能しているようだ。

 だが、頼久には一つ気にかかることがあった。

「神子殿、宜しかったのですか?」

「へ?何がですか?」

「いえ、今年も皆と花の宴を催されるものと思っておりましたので。」

「ああ、それはそれでやるつもりですけど、みんなの近況も知りたいし。でも、こうして頼久さんと二人でここの桜も見たかったんです。墨染の桜は特別ですから。」

「神子殿…。」

 墨染の桜は頼久が亡き兄を想う花。

 今ではあかねにとっても同じ意味を持つ花だ。

 だからこそここの桜は二人きりで。

 そんなあかねの心遣いが頼久にはただただ嬉しい。

「私は頼久さんと一緒にいられてとっても幸せです。」

 ひときわ咲き誇る白い桜の下であかねはそうつぶやいた。

 それが兄への言葉なのだと悟って、頼久はそっとあかねのを抱きしめるとその顔に笑みをたたえた。

「私もただ一人のお方のそばにいることを許され、これ以上ないほどに幸福です。」

「頼久さん…。」

 自分が幸せになることは許されないことだと言っていた人が、今はこうして自分と共にあることを幸せだと言ってくれる。

 そのことが嬉しくてあかねぎゅっと頼久に抱きつけば、逞しい腕が小さな体を抱き返してくれた。

 一陣の風に舞う花弁の中で、二人は同じ人を想いながら静かに寄り添っていた。





管理人のひとりごと

桜企画拍手御礼SSバージョン、頼久さん京編でした♪
お兄さんの話書くの久しぶり(’’)(マテ
ってことで何か不自然なところがあってもスルーでお願いします(っдT)
桜といえば頼久さん!ってくらい、管理人的には桜と頼久さんは切っても切れないものになっています。
またね、あの長い髪で綺麗なたたずまいで桜の下とかもう反則だ(’’)(コラ
ということで、桜の時期はちょっと管理人がはしゃぎます(マテ







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