
データを上書き保存で保存して、メールにその資料を添付して送信。
これで仕事は終わりとパソコンの電源をOFFにして、頼久は小さく溜め息をついた。
ここ数日の陽気で庭の桜はすっかり満開になっている。
もちろん、それを見にあかねがやってくるのはいつものことだとわかっていたのに、どうしても断れない急ぎの仕事が入ったのは頼久にとって地獄だった。
一つや二つ仕事が来なくなってもかまわないからこの仕事を断ろうとしたのはあかねに見つかって咎められてしまった。
おかげで今日、頼久は朝から鼻緒w身にやってきているあかねを昼間で放置しなくてはならなかったのだ。
仕事さえ終わらせてしまえばあとは大事な神子殿と幸福な時を過ごすだけと、頼久は張り切って立ち上がった。
書斎のドアをいつもよりも軽く感じながら押し開けば、頼久の視界に絵画のように美しい光景が飛び込んできた。
開け放たれたベランダの向こうにたたずむ少女の後ろ姿。
女性というにはまだ華奢ではかないその後ろ姿は、静かに、だがまるで輝くような存在感で舞い散る薄紅の中に立っていた。
神に愛でられた天使だの天女だのというものが実在するとしたら、それはこの人に違いない。
そんなことまで考えて頼久は無意識の内に桜の下に立つあかねへと歩み寄った。
そして…
「きゃ……頼久さん、びっくりしました。お仕事、終わったんですか?」
急に背後から抱き締めてきた長身の恋人を見上げながらあかねが問えば、恋人の様子がなんだかいつもと違っている。
どこか憂いを帯びている紫紺の瞳は吸い込まれそうなほどに綺麗で、あかねは頬を赤らめた。
「頼久さん?」
「今…神子殿が天へと帰ってしまわれる天女に見えました。」
「よ、頼久さんはまたそういう恥ずかしいことを…。」
いつものようにテレるあかね。
でも頼久の反応はいつもと違っていて、あかねを抱く腕に力がこもった。
「あの、頼久さん?」
「はい…。」
「私はこの世界から京へ行ったわけですから、違う世界へ帰るとかありませんからね?」
このあかねの言葉に一瞬キョトンとした頼久は、すぐに微笑を浮かべてあかねを解放した。
「そのようなことを考えたわけではありません。ただ、この世のものとは思えぬほど神子殿がお美しかったのでつい…。」
「今日の頼久さんは恥ずかしすぎです!」
真っ赤な顔であかねは家の中へと駆け込んだ。
そんなところはとても少女らしく愛しくて、頼久は口元をほころばせたままあかねの後を追う。
「お昼ご飯はパスタです!恥ずかしいこと言った罰です!頼久さんも手伝ってください!」
「喜んでお手伝いさせて頂きます。」
真っ赤な顔のあかねと幸福でいっぱいの頼久は、二人並んでキッチンに立った。
数十分後、二人は桜の見える縁側でゆっくりとパスタを味わうのだった。
管理人のひとりごと
桜企画拍手御礼SSバージョン、頼久さん現代編でした♪
京編がしっとり気味なのでこちらは糖度高めな感じで♪
京にいた頃の思いが甦ったか、頼久さんがあかねちゃんを天女とか言ってますよ(’’)
で、あかねちゃんも慌てて否定。
もちろん現代へとやってきた頼久さんがそんなことを心配する必要はありませんよ、というお話。
京でのつらい思い出も、ここまできたらみんなイチャつく材料にしてもらいたい、そんな管理人です(’’)(コラ
プラウザを閉じてお戻りください