
雨足は時が経つごとに強くなって、軽く夕餉を終えた今となっては雨音のせいで屋敷の中はうるさいほどだ。
人里から少し離れているから静かな一夜になるだろうと想像していたのに、どうやらそうはならないらしい。
そう思いを巡らせて頼久は部屋の中ほどにちょこんと座っているあかねを見やった。
紙燭の淡い明かりに照らされて、あかねは微笑を浮かべていた。
もともと嵐や雷をそう恐ろしいとは感じないあかねは、どうやらこの大雨でも怯えるようなことはないようだった。
「凄い雨ですね、外。」
「はい。これでは万が一敵が近付いてきても気付かぬやもしれません。」
「でも、泰明さんが式神を見張りに立てるって言ってましたから、大丈夫ですよ。」
そう、泰明はこの屋敷に到着して早々、式神を配置して全員に休養をとるようにと宣言したのだった。
それでもどうしても警護の確認をしてしまうのは頼久の習慣だと言っていい。
「友雅さんもこの雨音じゃちょっとやそっとじゃ隣の局の音も聞こえないだろうって言ってましたし、警護のことは考えなくていいんじゃ…。」
「友雅殿がそうおっしゃったのは別に警護のことを考えてではないかと思いますが…。」
「へ?」
あかねの隣で頼久も友雅の発言は聞いていた。
その言葉を口にする時の友雅の顔もよーく覚えている。
相変わらず面白くてたまらないといった顔で頼久に目配せまでしてきたのだ。
おかげで頼久は友雅の言葉の裏にある意味を嫌でも勘ぐらずにはいられなかった。
「警護のことじゃないんですか?」
「どうせこの雨音で何も聞こえぬから気にせずに過ごせとおっしゃっていたのかと。」
「気にせず過ごせ?」
「はい、私と神子殿を一つ局に入れたのも友雅殿の計算のようでしたので。」
実を言えばこの屋敷はかなり広い。
あかねと頼久が別々に眠ることも不可能ではなかったのだ。
それを友雅があかねが恐がるからとかなんとか全員を言いくるめて、夫である頼久と同室にしてしまった。
その時点で頼久は既に眉間にシワを寄せていたのだが、あかねは単純に友雅の好意と受け取っていたらしかった。
「えっと、それって……えーっ!」
友雅と頼久が何を言っているのかに思い至ってあかねは顔を真っ赤にすると大声をあげた。
当然その声も雨音に消されて誰も聞いてはいなかった。
道中、雨に降られて人里離れた屋敷で一夜を明かすことになったあかねちゃんと頼久さん。
仲間達が近くにいる状況で、それでも大雨のせいで気配を探るどころか声を聞くことも不可能。
そんな中、夫婦二人きりだと意識させられてドギマギしています。
この後二人は…?
みたいなお話の続きは連載にて!