上陸作戦
 船の中でも一番大きな船室にサザキを始めとする一同が集まっている。

 一応、サザキの姐さんとされている千尋も参加しているので、一同の目の前にはカリガネが作ったお菓子も乗っている。

 それはカリガネが会議など退屈だろうと気を利かせて千尋のために作ったものだったが、この場の全員に高評だ。

「お前ら、カリガネが作った菓子ばっか食ってねーで真剣に話し合うぞ。」

「サザキ、何をそんなに真剣に話し合うの?」

 隣に座っている千尋に尋ねられてサザキは顔を赤くしながら胸を張った。

「俺達は海賊だ!」

「うん、知ってる。」

「近いうちに上陸して仕事をする!」

「仕事?」

「おう、仕事だ!」

「二つ言いたいことがあるんだけど。」

「ひ、姫さん?」

「まず、海賊の仕事ってまさか盗んだり追いはぎしたりじゃないよね?」

「うっ…。」

「ダメだよ?人を傷つけたりとか、人から盗んだりとか。」

「そ、そうは言ってもよ、姫さん…。」

「もう一つ、海賊なのに上陸して仕事するの?」

「うっ…。」

「海賊って普通海で仕事するんじゃない?」

「そ、それはだな…。」

 慌てふためくサザキに一同は溜め息をついた。

 これが自分達の大将だと思うとさすがに不安になったらしい。

「普通は確かに海で仕事するんだが…普通に行き来してる船襲っちゃただの盗人だろう?」

「上陸してもやることは盗みじゃないの?」

「いや、まぁ、そうっちゃそうなんだが…。」

「だめだよそんな盗賊みたいなことしちゃ…。」

「いや、俺達は海賊で海賊ってのは海の盗賊のことだしな…。」

「それはそうだけど…。」

 言われてみればその通りで、サザキは海賊だということがわかっていて千尋はさらわれてきたはずだった。

 でも、いざ、悪いことをするとなるとやっぱり千尋には抵抗があって…

「ひ、姫さん、あのな、海賊ってのは海の盗賊っちゃそうなんだ、そうなんだが、なんだ、その…。」

「はっきり言え。」

「わーかってる!」

 カリガネにつっこまれてサザキはコホンと咳払いをした。

「だからな、盗みは盗みでも世のため人のために盗みをすることにした!」

 カリガネを除くこの場の全員の目が点になった。

 対してサザキはどうだとばかりに胸を張って自慢げだ。

「どういうこと?」

「実はな、この機に乗じて軍を率いて中つ国に攻め入ろうって不貞な輩がいるらしいって情報を手に入れた!」

「なんですって!……それってまさか…。」

「まぁ、オレが姫さんさらっちまったから中つ国はいきなり王不在になっちまったからなぁ。」

「そんな……。」

「だーかーらー、だ。」

 落ち込む千尋にサザキは不器用にウィンクして見せる。

「その不貞な輩から食いもんも武器も、みんな頂いちまおうってのが今回の計画だ!」

『おおー。』

 日向の男達からは感嘆の声があがり、千尋は驚きで目を丸くした。

「それなら盗みも中つ国のためになるってもんだ。どうだ、姫さん、これならいいだろ?」

「ん〜…義賊っていうのはわかるけど…義賊も盗賊に違いはないって鬼平も言ってたし……。」

「お、鬼?」

「ああ、それはこっちのこと…。」

「どっちにしろ中つ国を襲おうって奴らを黙って見逃すなんてできねーしな、そいつらを襲って頂くもんは頂いて、姫さんの国のためにもなるなら一石二鳥!」

 どうだとばかりに胸を張るサザキ。

 対して千尋は、やっぱり盗みや追いはぎをすることに抵抗はあるけれど、自分が急にいなくなったことで中つ国が狙われることになったのは申し訳ないとも思う。

「ダメ、か?姫さん。」

「へ?」

「もし、どうしても姫さんがダメだってんなら…やめる。」

「やめるって、やめてどうするの?」

「ん〜、そうだなぁ、お宝でも探しながら…。」

「探しながら?」

「魚でも捕るか。」

 そう言ってサザキはニッと笑った。

 そんなサザキの笑顔を見て、つられるように千尋の顔にも笑みが浮かぶ。

「それじゃぁ海賊じゃなくて漁師じゃない。」

「姫さんがその方がいいってんならそうするさ。」

「それじゃぁ海賊じゃなくなっちゃうよ?」

「いんや、お宝を探している以上は海賊だ!」

 そう言ってまた胸を張るサザキに苦笑する一同。

 でも千尋はそんなサザキの心遣いが嬉しかった。

 嬉しかったからこそ…

「わかった、今回はサザキの作戦でいっていいよ。」

「本当か?」

「人から盗んだりするのはよくないことだと思うけど、ギリギリ義賊なら譲歩します。っていうか、やっぱり中つ国が襲われそうだっていうのに黙って放ってなんておけないし…私のせいでもあるから…。」

「姫さんのせいじゃねー、オレのせいさ。」

「サザキ…。」

「盗まずにはいられなかったからなぁ、姫さんは、オレにとって世界で一番の宝だからな。」

「は、恥ずかしいよ、サザキ…。」

「ん?そ、そうか?」

 千尋に言われて初めて自分が恥ずかしいことを言ったと気づいて、サザキは千尋と一緒に顔を真っ赤にした。

「ととと、とにかくだ!オレは海賊だ!だから世界で一番のお宝は盗ませてもらった。だが、そのせいで起こる災いへの始末は海賊らしくつけさせてもらう!」

『おおーっ!』

 日向の男達は大将の言葉にいっせいに同意して、席を立った。

 千尋がキョロキョロしているとサザキはまた不器用にウィンクして見せた。

「あいつらはこれから仕事だってんで今日はもう宴会だ。」

「え、宴会?」

「おう、仕事の前に一騒ぎだ。」

「いいの?これから仕事って時に宴会って…。」

「景気付けってやつだな!」

「大将が景気のいいことばかり言っているからだ。」

「け、景気がいいのはいいことじゃねーかっ!」

「後先を考える方の身にもなれ。」

 そう言って溜め息をついたカリガネは、懐から小さな包みを取り出すとそれを千尋に無言で押し付けて出て行ってしまった。

「なんだろう、これ、カリガネ、機嫌が悪そうだったけど。」

 そういいながら包みを開けてみればそこにはおいしそうなお菓子がたくさんつまっていて…

「ああ、あいつはこれから仕事をうまくやるにはどうしたらいいか作戦を考えるからな、めんどうなんだろ。それにしても、あいつも姫さんには甘いなぁ。」

「作戦を考えるってカリガネ一人で?」

「おう、オレが考えてもたいした作戦は出てこねーからな。」

「た、大変だね、カリガネ…。」

「ま、深く考えなくてもどうにかなるさ。」

 そう言って笑うサザキに千尋は苦笑した。

 きっとこんな大将だからカリガネが苦労するのだろう。

 それでも、こうして鷹揚に構えて豪快に笑っていてくれればどこか安心で、きっとそんなところがサザキがみんなに大将として慕われる理由なのだろうと千尋はなんとなく納得した。

「あいつらはこれから一晩中宴会だ、俺達は甲板で空でも眺めながらカリガネの菓子でも…。」

「サザキは宴会に行かなくていいの?」

「お、オレか?オレはその…なんだ…カリガネの菓子の方が、な…。」

「ふーん、サザキはお酒大好き、宴会大好きだと思ってた。」

「……と、とにかく甲板へ出ようぜ!気持ちいいぞ!うん!」

 顔を赤くして慌てるサザキに小首を傾げながら、千尋はそんなサザキに手を引かれて歩き出す。

 手を引いているサザキはというと、酒も宴会も大好きだが、それ以上に大好きなのが姫さんだなんてとてもじゃないが言えたもんじゃないと心の中でつぶやいて、一人更に顔を赤くするのだった。








管理人のひとりごと

相変わらず少年だなぁ、サザキ(’’)
鬼平のネタってわかる人いただろうか…
貧乏くじをひいてるカリガネ愛しいなとか…
今回は色々感想がある管理人です(’’)
結局のところサザキは糖度が上がらないという苦悩が残るわけで…
ひょっとすると忍人より上がらないかも(、、)
いつかサザキにも男を見せてもらいたい!
そのために精進します(’’)






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